今日も生きてる

黒門亭昼席

〜お番組〜
柳亭市朗 『たらちね』
柳家花ん謝『長短』
天乃家白馬『二丁蝋燭(ろうそく)』
<お仲入り>
柳家さん生『きゃいのう』
金原亭伯楽『唐茄子屋政談』


意図したわけではないんですけど、なんか鈴本で11代目見たのに引き続き、十代目馬生門下強化週間です。十一代目馬生師匠も、白馬師匠も、伯楽師匠もはじめましてでした。これが、なかなか・・イイっすねえ。さん生師匠も含めて今日の番組はじつに滋味深い。やさしくて、香りのある柔らかい風がそよいでくるような、濃くてもまろやかな味の、おいしい緑茶みたいな。


というか、さん生師匠なんて記録を見たら初めてのはずなんだけど、なんかもう随分前から知ってるような感じさえするもの。さん生師匠の出囃子の曲いいな。公式プロフィールによると『四君子』という曲だって。『きゃいのう』の大部屋役者さんがまた情けなくもかわいらしかった。


白馬師匠は声がとてもきれいでした。『味噌蔵』かな、と思ったら、『味噌蔵』から一部抜粋したような体裁の『二丁蝋燭』という話。伯楽師匠は地が上機嫌なのがいいです。上機嫌な人の噺はマクラから本編から、何て事ない言葉でも聞いてて一緒に居心地がよくなる。赤線実体験世代だそうで、廓の思い出話がすごく楽しそうだった。また、すっごくニコニコしながらそんな話をしてても下品ではないというイイ塩梅。本編の吉原妄想シーンもそんな調子で楽しく、歌もしっかりお上手で素敵でした。


で、これだけ言っといて、終まで来て、この番組に来た一番の決め手は誰かと言うと、花ん謝さんなんですけども。この前の樽平と『長短』で丸かぶりなのは根多出しの会なので知っていましたが、7月も8月も地元・愛媛のお仕事ばっかりだそうで、もしかしたら今夏はお会い出来る機会がもうないかも知れませんので行っておきました。ちょっと個人的に所用もありまして。


私にとって『長短』はわりと胸焼けする事が多くて、大好きな噺ではないんだけど、樽平の感想でも書きましたが、なんか花ん謝さんのいい軽さでそれが中和されてて、二回連続聴いてもいいかな、と思えた。短い噺なのでマクラも長めだったし、しかも市朗さんにも花ん謝さんからの時間調整指示でマクラがあって、珍しいものを聴けました。ところで、市朗さんは佐藤隆太に似ていると思うのは私だけですか。市朗さんを見ると、「頑張って下さいね、噺家さん!」というより「練習がんばれよ!野球部!」という気持ちで応援したくなる。なんか、イメージが、野球部員。さわやかかわいい。前座さんといえども、もうそろそろ新米ではないのに、いつまでも初々しい感じなのは落語家にあって貴重なキャラかも知れません。