今日も生きてる

3月28日第71回不動院寄席

立川らく次 『野晒し』
立川志ら乃 『天災』
<仲入り>
立川志ら乃 『寄合酒』
立川こしら 『唐茄子屋政談』

http://www4.plala.or.jp/C-RANO/fudouin63.html


東京かわら版ロキノンの4000字REVIEWページみたいのがあったら投稿したい程、志ら乃さん評が長くて熱いです覚悟!

-全身高速運動体、不動院は燃えているか。-

すごいものを見た。
今まで聞いた中で最速の落語、志ら乃さんのことだ。

立川流の若い人たちは寄席に出ている(出ていた)人達に比べて、テンポが速いと聞いているし、実際に現場で見ていてもそう思う。
しかしその中にあってもダントツの、今まで体験した事のない超高速落語。


ともすれば噺家には似つかわしくない、サッカーのフォワードに冠するような、『運動量』という言葉が頭に浮かんだ。
ドリブル巧くて、俊足で、気が付けば一人こぼれ球を拾い、いつの間にか走り去っている。アグレッシブなプレイでそのまま5人抜き、次の瞬間にはもうゴール前。そんな様子を連想する。


これは噺の調子だけでなく、実際に顔も体もよく動く。
速い、速い、くるくると凄いスピードで表情が、声が、仕草が、変わっていく。
笑った拍子に体が動き、ちょっとでも目を離そうものなら、必ず「何か面白かった仕草」を見逃し、周りが笑うのについていけなくって悔しい。面白いセリフを聞き逃してしまうのも同上の次第である。


だから観客もせわしないのだが、口が回ってなくて肝心の言葉が聞きづらいという事もない。その上、役柄もきちんと演じ分けられているのだから、まさに後生おそるべしだ。


えー、ちょっといい加減褒めすぎでうさんくさいですが、回しもんじゃないですよ!
でもね、今日の連れ合いは志らく一門の常連さんだったのだけど、
「これが志ら乃さん初体験っていうのは、はっきりいってうらやましい事だよ。『この人は良かった』って印象が完全にインプットされるんじゃない」と仰られた程、出色の出来に居合わせたそうだ。
しかも、「今回の不動院は全体的にいつになく面白かった」らしい。


二席目に演じた『寄合酒』。
年間1000席以上の落語を聞いているという、かの堀井憲一郎さんが週間文春に載せた落語演目別ランキングで、『寄合酒』計9席中いちばん面白かった噺家に選ばれたとか。
志ら乃さん本人のブログに画像あります:
http://ameblo.jp/st-blog/entry-10010185379.html


ところで「全身落語家」ならぬ「全身落語バカ」の私は文春が一瞬、談春に見える・・!(アタマオカシイ)


-公共広告機構にひっかかりますよ-

本日は『こしら人情噺の会』というサブタイトルがあり、"人情噺"『唐茄子屋政談』にこしらさんが挑戦。

しかし世間で「人情噺」とされている噺を演じるわけで、当人がそれを人情噺と捉えなければ、噺は在らぬ方向へ向かうかもしれませんので悪しからず。
(パンフがわりの発行物・志ら乃さん執筆『手ごね不動院』より)


という言葉通り、もちろん「噺は在らぬ方向へ」。すっかり爆笑ものの滑稽噺になっていました。高座後3人のトークコーナーで、
こしらさん「いやーホロリと泣ける噺でした」、「泣けねーよ!こういう噺だと思ったお客さんがいたらどうすんだ!」とつっこみが入り、「まさかそんな人いないでしょ〜」という掛け合いをしていましたが、
少なくとも私は初めてなので被害者ここにあり、です。


嘘、大げさ、まぎらわしい広告は、公共広告機構へ、エーーーシーーー。ていうのが頭の中流れましたね。

-メガネと落語-

たいてい誰より支度が遅い私は、落語会や寄席の会場を出るとき私服の噺家さんを見る事も多い。そうして気付いたことがあります。
噺家さんメガネ多くないですか?!


えー私、ことメガネについては一家言あることを落語関係のキーワードで検索してくる方には恥ずかしいので発言を控えたいのですが・・


落語の高座に関係あることで一つ確実に言えるのは、
「普段メガネかけてる人が、高座でメガネ外して話すと目が見えてない」
視線の先にある人や物の距離感覚がつかめていないのは勿論のこと、簡単に絵柄でいうと、のび太がメガネ外したチョンチョン状態の目になっている。
(いや、それ、個人的には大好きだけども!)


これらのことは、普通に生活してる分には当たり前のことですが、「見えないものを見えるように見せるべき」落語では由々しきことだし、見てる方でもすぐわかってしまう。目に力のある噺家さんには、自然とお客の意識も吸い寄せられて、「聞かせる」要素のひとつだと思う。


二ツ目以上のメガネの人でこの関門をクリアしてない方はまずいないんですけど、前座の人は・・よくあるみたいで(笑)この前聞いた千弗さんもそうだったし、今回のらく次さんもそうでした。明らかに目の悪さがわかる。


常連さん曰く、らく次さんの動き・視線・表情が足りないのは前からよく批評されていることだそうですが、なまじもう喋りのほうが結構出来ているだけ、じつに勿体ない!もう少し、という気がしました。

-リアル○○を見つけたか?-

さて、もう一言志ら乃さんについて、褒めてるんだか褒めてないんだか分からんけど思った事を率直に。


ちょっと「小虎」っぽいとこない?


こんなこと書いたらそれぞれのファンに怒られそうで微妙だし、本物の落語家と比べるのは失礼にあたるかもしれませんが。
恐れながら私タイガー&ドラゴンに感動して落語に行きはじめたもので、本物の落語を知った今となっても、長瀬演ずる小虎の落語が忘れられない原点になっています。


岡田くんの小竜ちゃんは落語としてちゃんと聞くとあんまりですが、小虎のはホント、今聞いてもやっぱりいいと思う。
無闇に熟練落語家の真似してテンポの良さにこだわったりせず、今までの役者経験で培った絶妙な声の出し方、間の取り方、動き、表情など、出来る事で勝負しているから、ちゃんと自分なりの落語が成り立っていてすごい。


と、こんな風に小虎が好きすぎるあまり、面影を無意識に探しているための錯覚かもしれません。


でも、あのー、志ら乃さんをスロウになったものを想像してみて、声の調子とか、動きや表情の派手さとかが結構似てる気しない?
特に今回、長瀬がよくやってた八っつぁん熊さん路線だったから余計そう感じたのかもしれない。
うーーん、巧く言い表す妥当な言葉が見つからないけども。
語弊があるのを覚悟であえて言えば・・「長屋の若い衆系の、あくまで下品じゃないチンピラっぽさ」とか?


タイガー&ドラゴン」で検索してこの記事読んだ人は志ら乃さんを聞きにいけばいいんじゃない、とか言ったら私も公共広告機構に訴えられるかしら!

追記:ほかの人の『天災』と聞き比べ、日を開けての追記です。この『天災』という噺自体が『小虎と師匠・どん兵衛』のやりとりによく似ているのだと気付いた。だから、志ら乃さんというより、『天災』の志ら乃さんが小虎っぽい。

隣で聞いてたのに視点が全然違って面白い、一緒に行った人の日記

http://d.hatena.ne.jp/spankyi/20060328/1143556805
いずみさんが受けてる所は全部私もバカ受けしたところだったから、読むと思い出し笑いが止まらない。らく次さんのマクラ「ダークサイド志の輔」とか、志ら乃さんの「柳の木」「かつぶし鬼」とか、こしらさんの「ヴィヴァルディの春」「"キレ"サゲ」(と名付けたいな、あの突拍子のないサゲは)とか。

↑追記修正
最後の一文とち狂ってさっきまで「こしら」さんのこと「こらく」って書いてた。すみません。修正しました。たまにまだ名前がこんがらがる。談笑さんというつもりが口に出た言葉は笑志さんだったこともあるくらいで。
全身落語バカも修正(こっちはどーでもいいけど)