今日も生きてる

ほのぼのお昼

今日は授業と授業の間にともだちとお昼を食べにいきました。ともだち(仮にYとする日本人男子)はのんびりお散歩とか昼寝とかが大好きな人なので、食後、二人で近くの緑地公園にいって、ビーチマット敷いてごろごろしていました。木曜日は1番目と2番目の授業の間が3時間くらいあって、2番目の授業がわりとユルめ進行なので、かなりゆっくりできる。


アラームかけてちょっと寝ようか、ということになり、目を閉じて数分後、ともだちが突然、「ねえ何か落語やってよ」と言ってきて、
私「えーー何それ。出来ないよ!やる方じゃないもん」
Y「でもいっぱい聞いてるんでしょ?好きなんでしょ」
私「Yだってフットボール好きだけどやらないでしょ?」
Y「たしかに」「でもやってよ(アッサリ)。何でもいいからさー。下手でもいいから。ねーねーやって」と押し切られ、
何の因果か、芝生の上で寝っころがりながら、隣りでも寝っころがってる人に向かって、


私「そ、それでは、始めます。」「何だいおさきさん、ン、ンッ、えっと、何だいおさきさん」・・照れと状況オカシイので笑っちゃって、そこから先になかなか進めず、5回くらい「何だいおさきさん」を連呼。
Y「おさきさんが何なんだよ!」
私「えっと、これは『厩火事*1って話で、おさきさんていう女の人が旦那さんとけんかして、二人の仲人をしてくれたご隠居さんとこに相談しにきたんですよ」
Y「そういう説明じゃなくて、適当に作ってもいいから登場人物分かるように演技してやって
私「ええーーーそんな!?難しすぎるって。なにこの超『やらされてる感』・・ひどい!」と抗議も空しく、押しに弱いわたくしは、再度「な、な、ン、ンァ、ななんだいおさきさん」とカミカミ&うろ憶えで話し始めました(万事素直)。


「ねぇ旦那、ひと足先にうちに行って『女房の身体のことを心配するように』って言ってくれませんか」とオチの部分で*2、ともだちはププッと笑い、おお、うけた、とちょっとうれしかったのも束の間、
「へーおもしろかった。今何時?まだ時間あるね、もう一個なんかやって」とジャイアンリクエストをしよる。


わたしはめげずに、ドンドンドンッと戸を叩く仕草をするつもりで芝生をモフッモフッモフッと叩き、「おいおいおい!隠居!隠居!」「昨日はまんじりともせず眠れなかったんだ、おまえさんとこに女が入ってくじゃねぇか、さぁて隣りは隠居だよ。『女は好かぬ』だなんだと言っといて、ありゃあどういう事だ」などと、適当にうろ憶えセリフでつくろいつつも、『野ざらし』*3を語りはじめました。「おやあの女をご覧じか」「ご覧じかじゃないよ、文金の高島田。年のころ十六、八ですか」「何お?」「十六、八かい」「妙な数とりだね。普通十七、八、あるいは十六、七だろう。七が抜けてら」「質は先月流した」と言って、しばし止まり...「ごめん、分かんないだろうけど、今の名ゼリフなの。言ってうれしい・・」とじーんとする。もちろん友だちには「へー」と無感動に流されたが、頑張って先をつづけた。


「針なし」の所までやり、
私「この噺はこの後にも続きがあるんだけど、オチがわかりにくいのでほとんどの噺家さんはやりません。私もこの先は2回しか聞いたことないので、ほとんど解説になっちゃうけど、太鼓持っていう職業があってね(説明省略)、で、楽器の太鼓は馬の皮で出来ててね(略)・・とまあこの二つの言葉をかけて、こうこうこういうオチになるの」
Y「たしかにわかりにくいね。」「今のより最初の方が面白かった」
私「えーーーだからちゃんと噺家さんがやれば、これも超面白いんだって。くやしいなー。『野ざらし』大好きな噺なのに。屈辱。」
Y「ていうか、落語って一回目はおもしろいだろうけど、二回目無理じゃない?」
私「そ・れ・が違うんだってば。500回以上聞いてる私がいうんだから間違いない。」
Y「500回て。500回観に行ったの?」
私「いや観に行った会はたぶん150回くらい。500回以上っていうのは、一話ずつ・のべ人数で、たぶん今もう6〜700回位になってると思う」
Y「ふーん。じゃあそういうものなんかな」
私「そーいうものなの!!こんなんで落語だと思わないでね・・(力説)」
Y「わかったよ。でも結構想像しながら聞けたよ」とのこと。


そろそろお時間になり、車に乗ってまた学校へ。ともだちは私が語る「好きな落語家さんトーク」の中で一番、「立川こはる」が印象に残ってるみたいで、「日本に帰ったらおれもこはるちゃんの落語に連れてって」と言われました。


ということで、今日のお昼は「原っぱの真ん中で寝っ転がってる人に向かって見よう見まね・うろ憶えで落語をやる」、という超ふしぎ空間がだらだら展開されました。ゆるーー。念のため、ツッコミどころ満載だろうから書いておきますが、ビタイチ甘酸っぱい関係ではなく、のろけとかじゃないですお。ここ1年くらいで仲良くなった人で、たぶんちょっと年上なんだけど*4幼なじみの男の子たち並に、まったく気張らず一緒にいられる人だ。ノーメイクで会えるし、おごったりとかされないし、気が置けなくてらくちん。


ちなみにこれらの落語は下記でちゃんとしたのが無料で見たり聞いたりできるよ:
入船亭扇遊『厩火事』(音声/mp3)
入船亭遊一『厩火事』(動画/リンク先においてあるのはm4vファイルだけど、ポッドキャスティング経由でダウンロードするとmp4で見られます)


古今亭志ん駒『野晒し』(音声/mp3)
古今亭志ん太『野晒し』(動画/リンク先においてあるのはm4vファイルだけど、ポッドキャスティング経由でダウンロードするとmp4で見られます)
私にとって、柳好師匠の『野ざらし』がたぶんこの世で一番沢山聞いてる落語音源なので、古今亭の型にはちょっと違和感があるのを否めない...。どうにも柳好さんのが好きすぎる。あと生きてる人では入船亭扇辰師匠の『野ざらし』がすごいです。歌も巧いし、「針なし」までの妄想超特急も派手で楽しいし、太鼓持が出てくるほうのオチもちゃんと笑えるように、分かりやすくマクラで説明入れてから最後までやってくれます。

*1:脳内お手本:入船亭扇遊師・入船亭遊一さんの型

*2:古典落語でもオチや詳しい内容の明記が不必要な場合はネタバレ避けします

*3:脳内お手本:三代目春風亭柳好師の型

*4:意地でも年を教えてくれません。「年隠すほうがおっさんくさいよ」って言っても「22歳だもん!」って言い張る...大人げねえー..