今日も生きてる

インカ・マヤ・アステカ展7/14-9/24


於:国立科学博物館

個人的に激しく興味があったわけではないけれど、友達に誘われて行く。友達曰く、南米古代文明は医療文化がすごかったらしくて、その辺の事について書かれた本を最近読んでとても面白かったらしく、「そういう展示を期待してたのに、都市計画や産業経済、祭祀文化に関する展示が主だったので残念」だそうだ。まあ確かに、そのへんの展示はわたしも、「ふむふむ」程度でやり過ごした。でも二人にとってヒットだった展示が一つだけあって、それは『インカのミイラ文化』!


前にも書いた通り、以前は美術史専攻で、博物館で実地研修した事とかもあって、そこの博物館で当時扱ってたのが大英博物館からのエジプト展だったし、大英博物館本体にも行った事あるので、エジプトのミイラは結構見てるんだけど、インカ文明のミイラはエジプトのとは全然違う印象を受けた。


アンデスのような南米の高地域は、エジプトと同じ様にとても乾燥しているため、死体は自然とミイラ化する。日本のように、死者の体が腐って白骨化して土に帰ってしまう国の、「霊魂はあるかもしれないけど体は死ねば土」死生観と違って、南米では死体の形が残るため、死者はその後も一種「別の形になって生きている人間」として扱われる。死して尚、ミイラも生きている人々と「暮らす」。具体的な例をあげると、ちゃんと着物を着替えさせたり、貴人には従者がついて、祭事の時にはお輿に乗って生者と一緒に参列したりしていたそうだ。
展示されていたのは、発見されたミイラの中でもかなり状態がいいものだろうけど、本当に、「生きている人間」みたいだった。エジプトのミイラは完全に「モノ」としか思えなかったけど、インカのミイラには「ヒト」を感じた。しかも、大事にされ、慈しまれてきた歴史を身に刻んだ「ヒト」の存在感。あれなら一緒に暮らせるかも、と思った。でも臭いはないのだろうか・・それは心配。友達と例の年金目当てで白骨死体と暮らしてた人の話になり、「道徳的におかしいというのを別にしても、臭いに堪えたのはすごいよね。たかが年金のためにそこまでしたのは根性ある」「インカのミイラだったら一緒に暮らせそうだけど、日本のは無理だね」と言い合った。


参照リンク:
『ミイラの語りかけるもの』
http://members.jcom.home.ne.jp/invader/works/works_6_a.html
NHKスペシャル:失われた文明 インカ・マヤ
第1集 アンデス ミイラと生きる
http://www.nhk.or.jp/special/onair/070701.html