今日も生きてる

『第9地区』の主たるツッコミポイントに対して私が考える好意的な見方

Q:エビ宇宙人製機械の燃料が人間の遺伝子をエビに変質させる物質である、という設定は都合よすぎないか?
A:エビの科学機器は彼らの遺伝子にのみ反応するっている設定があるじゃないですか?その流れで科学機器が彼らの遺伝子情報を有した「彼らが彼らという種の生命体である源」というか、「遺伝子濃厚凝縮原液」みたいなものを、燃料として動く仕組みになっているって話だったら結構違和感ないんじゃないかなって思った。地球語でいう「気」みたいなものが、宇宙人にとっては有形で存在するとして、しかも、その生命体の情報を持っている物質ていう、エビ成分の塊みたいなものと考えればそれなりにしっくりくる。遺伝子物質でイメージしにくければ、彼らは人類と別構造の生命体であり、違う進化の歴史があるわけだから、たとえば生まれながらにして全員が共生生物みたいなものを内蔵してて、その共生生物があのエビ人をエビたらしめていて、機械はその共生生物に反応するとか・・・。で、液体はその共生生物の塊。


Q:なぜあんなに高度な武器があるのに人間達に逆らわないのか?
A:いちおう、(町山さんとかはその言い訳では弱いって言ってるけど)兵隊エビ以外ほとんど全滅してるから、指揮するようなインテリエビがいないから、っていう事になってますよね。あとインテリエビがクリストファー達の他にも生きていたとしても、クリストファーみたいな平和主義者ばっかりだったから、などという捕捉理由も想像できる。それはあの高度な武力技術発展と矛盾するという意見も見受けられるが、たとえば、1)あの武器は人間型以外の脅威(生物/無生物問わず)に対抗するための武器であり、人型の生物に対しては平和主義なインテリ層たちであったので、人類に対して行使しようと思わなかった、とか、2)そもそもなぜエビ達が地球にきたのかは語られていない点に注目すると、激しい戦争があり、それが武力発展という結果を産んだが、好戦的なエビたちは共倒れ、故郷の星は居住困難な状況になり、一部の平和的避難民のみが、装備だけ持って宇宙へ流浪の旅へ出た説なども考えられる。とか、とか。


Q:人間の技術(ヘリなど)でいける母船になぜ今まで行かず、20年もかかって司令船+燃料を完成させてたのか?
A:仮説1)近寄るまでの警備が厳しくて、ヘリとかで孤軍奮闘して近づくのは絶望的だったから。仮設2)クリストファーが作った司令艇は鍵的な役割があって、ただエビ個体が母船に戻っただけでは母船の起動・操縦などに不備があったから、あと例の液体の燃料不足?(あの燃料が司令艇を動かすのにだけ必要だったのか、それとも母船にとっても必要だと描かれていたのかはちょっと記憶が定かじゃない)(母船も元々は単独で操作できる機能があったのかもしれないけど、そこは地球にくる間に故障した、または、故障した事がそもそもの発端で、そのため地球に不時着→静止せざるを得なかったとか)。


しかし、これは弁護できないと思うツッコミ所も当然…
Q:MNUほか人間側組織は、ヴィカスを追うんじゃなくて、あの液体があやしいと思うのが普通じゃね?
A:そこはそうなんですよねー。だってあの液体はちゃんと重要サンプルとして確保されてるし、MNUの記録を見て(同僚に口止めしてるっぽい描写はあったけど、そんなの上からの圧力でなんとでもなるでしょ)、あの日のヴィカスの行動を追跡すれば、明らかにクリストファー・ジョンソン家に行ってからの異常→クリストファー・ジョンソン宅調査→科学者であることがばれ、人間側が利益を得るために追いかけるべきは明らかにヴィカスじゃなくてクリストファーですよね。うんうん。


Q:ナイジェリア人の扱いがひどい。
A:うん。ひどい。そりゃあナイジェリア内で上映禁止にもなるわ。まーでも、「香港マフィア」とかが定番すぎて半ば名物的な扱いを受けており、ステレオティピカルな描き方をしても香港の普通の人たちが怒った話を聞いたことがない事を考えると、受け手が完全にファンタジーとして見ていれば、いいのかな...中国人やら未開の部族やらのゲテモノ食い/人肉食い描写とか(インディ・ジョーンズ的な)みたいに、もう観客が虚構として受け止めるのに慣れてるからなんとなく周りの評価もアリっぽい、と判断していいのか、それとも「バカは信じるから危険だ!」なのか...


しかし、『第9地区』、作品の完成度的是非はともかく、こうやってあれこれ裏設定などを妄想したり、ひとに語りたくなるわけですから、やっぱりとても魅力ある作品だったんだなと思います。続編希望という意味ではなく、お慕い的ないみでワス、クリストファーにまた会いたいもん。ヴィカスはテーマを表現するにあたり重要であり、適任なキャラクターだけど、魅力でいえばクリストファーだな〜。ちなみに、この映画が正に使っている手法であり、主題ともいえる概念を表した「カニと修造 - タマフルたまり場」理論の話は、本当に目からウロコなので、この回のタマフルを未聴の方は是非聴いてみて頂きたいです。お時間がなければリンク先の内容だけでもご一読ください。