今日も生きてる

『バベル』ほっとけない世界の伝わらなさ


バベルの塔の逸話に関して、「天にも届く塔を立てようとおごった人間たちに怒った神様が雷かなんかで塔を壊す(文明を壊す)」っていう部分しか憶えてない状態で観た。観賞後の調べもので、「神様がバべルの塔を壊したとき、人間達への罰として、お互いがコミュニケーションし合えないよう、共通の言語を奪った」という部分の方が、この映画の予備知識として大事だった事を知った。予備知識があった方がいいものって絶対あるけど、やたらにネットで調べてしまうとネタバレの可能性が高いのもムズカシイ案配だよね。観終わってうすぼんやりとした気分しか掴めてなかった全景が、「言語、人種、男女、肉体的障害、経験、ひいては全人格的な違いによって理解し合えない、伝え合えない人間たち」や「愚かさと罰とつぐない」がテーマなのだと理解してから、やっと完全に落としどころがはっきりした感じがした。物語的な意味でのオチはなくてもいいのだけど、メッセージ性の強い映画なので、「バベルの塔」の知識がないとパズルのピースがごそっと埋まらないかんじ。


演出と映像描写が幻想的なことや、起承転結がはっきりしているような物語性が低いのにもかかわらず、主題がはっきりしていること含めて、絵のような映画だなぁと思った。色々な設定に現実味がないと書いているレビューも読んだけど、これは現実味をスパイスにした寓話映画だと捉えた私にとっては気にならなかった。日本編の十代女子の表現(そして障害の表現)はかなり生々しく痛いので、自分はギリギリ「アリ」判定だったけど、不愉快に思う人もいるだろう。というか、まあこれは人間の不愉快さを「いやー」って思ってその後で抱きしめる、みたいな映画だからそれでいいのかな。エヴァ的な。あとこれも、いま流行りの(?)時間軸錯綜ムービーです*1

*1:私はこの後『メメント』を観てるので