今日も生きてる

アンチ「お客様は神様」理論


今回の話題は落語だけじゃなく、自分より若い人や部下に絡む哀れなオサーンたちやネットで気の弱いひとに絡んでいくオレ様な人たちに通ずるところもあるかも...。

「ある落語評論家のある高座の評にこんなフレーズがありました。これは当時ある中堅の真打にむけてのものだったのですけれど、
「もっと精進しなさい」
「もっと修行しなさい」」
その時、はぁ、なにこれ?と思ってしまいました。あんた禅の高僧か?

いまでもこういう評を時々ブログで見かけます。こういうのを読むと私の方が目くじらたてたくなりますね。
引用:http://d.hatena.ne.jp/baikun_an/20080621/1214060309

梅薫庵さんの記事にコメント書いたらすっかり長文に。改めてこちらでも色々思ったことを書いておきます。落語評論家及び昔ながらの落語ファンがしばしばムダに偉そう問題*1。これは私もよく考えているし、私の周囲の人でも「あれ嫌だよねー」と言っている人が結構いる。


以前から度々書いていますが*2、とにかく落語ファンをしていると、昔の名人命、なだけの人はまだともかく、転じて「最近の噺家は..(苦言)」という類のファン、「あいつは巧くなった/下手になった」とかいう上から目線の人に出くわしてすごくうんざりする事が多い。私が生きてきた時代と往年の落語ファンの方々が生きてきた時代とでは落語家含む芸人一般の社会的地位が低かった事もあると思います。しかしそれでも偉そうな落語ファンには「何様なんだ?」と、苛立ちを覚えます。私にとっては自分の尊敬し愛する人をバカにされてるも同然です。落語という芸術を愛してるならその芽を潰すな、現役落語家を育てる気がないなら録音だけ家で聞いてろよ、と思います。このテの人がまた、実際は大して現場通いもしてないタイプだったりすると余計に怒り心頭。堀井さんくらい通っている人ならともかく、おまえが言うな!ムッキー!!


落語ファンに限らず、私は老婆心を大義名分とした愛のない批判が大嫌いです。「愛してるなら何言ってもいい」という訳ではないのですが、対象に愛情があって、長期的に関わる覚悟があって、その人が傷ついたら自分も傷つくというリスクを背負って初めて批判というものを公の場で口にしてほしい。そうすれば言葉の選び方だっておのずと変わって来るはずです*3。なんつうか、お客様は神様理論とか芸能人有名税説を振りかざし、自分は安全なとこにいといて、上から目線てなんなの?と思う。これは落語ファンだけじゃなくて、他の分野のファン、とくに私の趣味関連ではアイドルファンに多い気がする。「○○(←アイドルの名前)オワタ」とかいうの聞くと超何様かと。己は何様だという自己批判ゼロの輩が人を批判するのは片腹痛いぜよ。若手に酔っぱらってクダまくオッサンとかうざすぎる*4。私のように崇拝しなくてもいいけど、せめて普通の大人同士と同程度、常識レベルの礼儀で噺家さんに接してほしい。


極端な例だとにぎわい座で家元に野次を飛ばしたオッサンの件や、当時はお茶を濁して書いたけどこの日私がムカっ腹立った理由も、あるオッサンが感じの悪い事を演者本人とお客さんのいる前で言って場をシラケさせたからである*5。この人が言った事はというと内容も建設的な意見では全然なく、ただただ周りを不愉快にさせる的外れな発言だったので、1万歩譲って演者が批評を求めているとしても、他の客の気分を害さないように聞いてないとこで言えよ!と思ったものである。


>>アイドルはもっぱら恋の歌を歌っているのに恋愛しちゃいけないって発想はおかしくないか、と長年思っている。作品は買っていても本人のプライベートまでお金を出して買っているわけじゃない。<<とも以前書いたけれど、同じ論理で、落語家の公演というサービスにお金を出していても、その人に対して人間的に礼を欠く権利を買っているわけじゃない。というか何人たりともそんな権利を正当化する根拠はない。これは他のいかなるジャンルの作品にもいえる。そういうものをお金で買えるとしたら、それは身体と全人格を購入する人身売買です。

*1:「問題」言ってみたいLifeファン

*2:「名人、名人ていうけど、文楽が産まれた時から落語上手かったわけじゃないでしょう!」「おばあちゃんたちから、昭和の名人の話を聞くとうらやましく思うけど、でも、私は今の人達がきっとそうなってくれるって信じてるんですよ。今の中堅層、例えば協会だと、市馬さんとか扇遊さんとかもいれば、白鳥さんとか彦いちさんとか喬太郎さんみたいな人もいて、層が厚い。楽しみじゃないですか。名人の録音なんていつでも聴けるんですよ。今同じお金払うんだったら、私は生で聞ける人を聞いておきたいです。」落語は一期一会、その愛は幾歳月を越えて。 - 今日も生きてる/「自分は基本的に今生きている噺家から入った落語ファンであり、古参落語ファンの名人礼賛には『未来の落語を殺す気か!』と反感を覚えていたし、現場命だと思っている」堀井憲一郎さんと落語マトリックス制作後記 - 今日も生きてる

*3:ただ「つまんない」とかじゃなくて、改善できそうな案を出すとか、言い方だけでも柔らかくするとかさ

*4:さらにいうとそういう人に限ってけしてエライ師匠には絡まず反論できない立場の若手に絡んだりする!なんという恥知らず!

*5:またこの時なんの助け舟も出せなかった自分にも悔しかった/だってストレートにオッサンにケンカ売ったら落語家さんの立場も悪くするカナーと思ってさ..