今日も生きてる

大銀座落語祭2007「立川談笑の世界」「立川志らくの世界」


於:博品館劇場

〜お番組〜
【第一部 立川談笑の世界】

立川談笑時そば
立川談笑粗忽長屋

<お仲入り>

【第二部 立川志らくの世界】

立川志らく『寝床』
柳亭市馬『七段目』
立川志らく柳亭市馬 昭和青春歌謡ショー(シークレットゲスト:森口博子


落語も面白かったんですけど・・・歌謡ショーが素晴らしすぎて脳内メモリがすっかりそっちにいってしまいましたので、歌謡ショーの話だけ書きます。落語のレポートは他の人にまかします。
市馬さんが!市馬さんが!市馬さんが!
もう本当に本当に本当に!かっ!こっ!よかっ!!!
たーーーーーーーー!!
十八番中の十八番、『俵星玄蕃』では感極まりすぎて叫び出したくなる位でしたが、それが出来ないので隣り3人に聞こえる位の声で吐息まじりに「かっこいい・・」「最高」「かっこよすぎる」を繰り返していました。
市馬さんの歌謡ショーは通算三回目、うち二回が市馬さんと志らくさんの二人企画ですが、「市馬さんの『俵星玄蕃』がすごい、すごい」、と聞きながらも、今回が初めての拝聴でした。


も、「僥倖」、「至福」の域です。これは。何か、「神様」とか「奇跡」とか、そういうレベルで強いもの、美しいもの、良きもの、尊いもの、格好いいものに触れた気持ちです。こういう瞬間があるから生の舞台通いはやめられない。歌う柳亭市馬師匠は宇宙一かっこいい人類の一人。形容詞にはTHE MOSTがつきます。


第一号の落語ワンダーランドの落語家百傑だったかしら、ということは長井好弘さんの文章なのかしら、いま手元にないのでうろ覚えばかりで申し訳ありませんが、どこかの市馬師匠に関する記述で、「先代小さん師匠もそうだったが、柳亭市馬の噺を聴くと、何か大きなものに触れている喜びを感じる」という様なものがありました。その表現は、あの人の良さを伝えるに至極的確な描写で、こと今日の歌謡ショーで味わった多幸感は、まさしくその気持ちの頂点でした。


身長が高いからでしょうか、あの「目に見えない暖簾をくぐるような独特の形」でのっしのっし出てくる姿や、常ににこにこ笑っている朗らかなお顔、白くて大きな腕と手(今回の『七段目』のように、見得を切る場面などで腕をグッと前に出されると胸がキュンとします!)背筋がすっと伸びて上体がぶれず、雄大で美しい山のような高座姿、ピシリ・フワリと奇麗に決まる所作、声以外にもつぶさに愛着が湧きます。


宝石や美術品のような繊細な美しさじゃなくて、懐が大きくて豊かで滋味深い、自然風景のような美しさなんですよね。父なる山の美しさ。先代小さん師匠の「山にお月様が登ったような形」も愛してますが、市馬さんは月のかかっていない、早朝の高原の澄み渡った空気の中で、暖かな陽を照り返しそびえ立つ山のようですね。
ああ、市馬さんの子供になりたい・・*1もちろん嫁もうらやましいのですが、あの大きな背中におんぶされたくないですか?わたしはされたいです。余談ですが私の初花さんを好きな気持ちは3割くらい「シルエットが小さん山だから」です(ほめてます)。噺家さんはカタチ大事。きれいごとの容貌も大事だけど、いかにも噺家!な愛嬌型も同じくらい大事な要素だと思う。柳家は「太るのも芸のうち」だといってもイイ。柳家のかわいいぽっちゃりさん達に愛をこめてね(若頭はもちキョンキョン)。


話は戻って。
志らくさんも歌謡ファンとして楽しんでいるのでしょうけど、芸人としては自らが身を引き、お客さんがより楽しめるように「俵星玄蕃」を入れる構成にした志らくさんに感謝です。志らくさんだってけして歌が下手なわけではない、むしろそのへんの一般人と比べたら旨い部類なのだけど市馬さんと比べられたらたまらないですね。落語、歌謡ショーの衣装、冗談歌謡*2では本当にお腹かかえる程笑わせて頂き、違う方向で勝負、という芸人魂を感じました。古典的なお笑い芸人みたいな金ラメスーツ+蝶ネクタイという最初の衣装は完全にネタでしたが、二着目の高級船舶員の正装風、というか昔の名画ヒーロー風の、上下白スーツにカッチリした白いハットという出で立ちは最初笑ってしまったけど、志らくさんの濃い顔立ちに映えてよく似合い、そういう役者さんだと思って落ち着いて見てみると格好よかったです。


歌謡ショー部分の番組:
1.志らく 冗談歌謡 さだまさし『防人の歌』のメロディーで、歌詞が『津軽海峡冬景色』・『寿限無*3』・『芝浜*4
2.志らく 守屋浩『夜空の笛』

3.市馬 『なつかしの歌声』
4.市馬 『東京の花売り娘』(3・4:衣装は黒タキシード!)

5.志らく 『東京の空青い空』
6.志らく 『長崎のザボン売り』(1・2・5・6:衣装はキラキラした桜井ペペさん風。照明が反射して物凄く目がチカチカした)

7.市馬 『元禄名槍譜 俵星玄蕃』(上は薄紅色の着物、下は灰色の袴で登場。やっぱり着物の方が格好いい!!お芝居付きでフルバージョンです)

8.志らく 北原謙二『故郷の話をしよう』(「立川流の宴会があると毎回ラストはこの曲を全員で合唱する」「これを歌えなければ立川流じゃない」「立川流のテーマソンング」だそうです。私もファンとして練習しようかな・・)

9.シークレットゲスト森口博子さん登場!初めて真面目に森口さんの歌声を聴きましたがとても奇麗でした!さすがプロ。唄は『夜来香』。曲自体も初めてですが良い曲ですねー。

10.三人でちょっとトーク。志らくさんの冗談歌謡『勝手にしやがれ』の曲で『舟唄』が笑い死ぬクオリティ。あともう一つ何か真面目な曲の節で『どんぐりころころ』も。森口さんも『水戸黄門のテーマ』のメロで『どんぐりころころ』を披露。真面目な曲調だと「お池にはまってさあ大変」がさも大事件に聞こえて可笑しい。志らくさんはこの冗談歌謡が20種類くらい出来るそうです。まだまだそんな特技があったとは!!

11.三人で『東京ラプソディー
私は歌謡曲なんて市馬さんと志らくさんを通してしか知らないんですが、聴くといいなとは思うんです。『東京ラプソディー』も何度かこういう席で聴いて好きな曲の一つ。志らくさんが家元のかわいいエピソードを付け加えてました。「『東京ラプソディー』をカラオケでいれたら、トイレに入ろうとしてた家元が好きすぎて我慢出来ずに戻って来たんですよ。しかも戻って来たときはもうすでに足がこんな感じでタッタカッタッターって(←リズムに乗って行進の足並みで戻ってくる家元の描写)」爆笑。
あれから今日、まだずっと今も、『東京ラプソディー』が耳に残っています。名曲だなあ。


久々に気合の入ったレポート書いてみました。市馬さん、市馬さん、市馬さん!
『七段目』ももちろんスッバラシかった!市馬さんがここに出る事は、志らくさんと市馬さんの各公式サイトや出演者の口から公言されてたわけですが、一般情報媒体には記載されてない出演で、チケットを買う段階ではない情報だったので、こんな素晴らしいものを見ちゃっていいのか、という気さえしました。


追記:市馬師匠がマクラでやってた彦六師匠のモノマネが激似でもだえた。「あの人の披露口上は何言ってるか分からないところにも値打ちがありました」

*1:以前初花さんをドン引きさせた妄想

*2:違う曲のメロディーと歌詞を合成する

*3:名前の言い立て部分

*4:ダイジェスト!