今日も生きてる

第7回立川志ら乃独演会

於:上野広小路亭

〜お番組〜
立川志ら乃『鰻屋』
立川志ら乃『風呂敷』
〈お仲入り〉
立川志ら乃『二十四孝』


記念すべき帰国初落語は前座なしの志ら乃独演会三席。

ネタ選び渋いですねえ。
最近月例独演会では「外さない志ら乃さん」を捨てて「勉強会」になりつつあり、得意ネタを外してくるのでどうしても全編面白いというわけにはいかず、お客さんも減り始めている、となんとなく聞いていた通りの状況であった。


しかも風邪病み上がり(顔真っ青)、担当ラジオ番組の取材で相当お疲れのご様子(眠すぎて目がうつろ)(トークもまとまらない)。ある意味あえてディープファンとして言っちゃうと、「こんだけつまらない志ら乃さんを見るのって初めて!貴重だな〜」くらいに思った。


とはいえ、ほとんどやりなれないネタばかりと思われ、しかも呼吸が苦しくていつものように早く喋れなかったらしく、それぞれ普段の志ら乃さんから比べるとかなりゆっくり、削らず、丁寧にやっていた。本人も「今日ははしょらず教わった通りやりました」とのこと。


志ら乃さんなのにものすごく古典古典してる!とさえ思った。でもこれはけなしてるんでなくて、志ら乃さんの落語から現代的なくすぐりをとると、「人を笑かす」という点とはまた別の、「落語的リズム」とか、そういう技術的な意味での志ら乃さんのすごさがよく分かる。圧倒的だと思う。「笑わなくても聞ける古典落語力」とでもいえばいいのかな。そういうのがすごい。


それもあってか、最近の志ら乃さんがとみにそうなのか、いやーーー本当に家元と志らくさん両方によく似ている。前はたぶん志らく7 : 談志3ぐらいだったと思うけど、いまは5:5。


素人時代コピっていた影響というのとは何ランクも上の技術水準で「また」似てきている気がする。たぶん『風呂敷』の酔っぱらい亭主だったと思うんだけど、本当に100%談志としか思えない一瞬があってドキッとした。キャラ的には志ら乃さんの酔っぱらい亭主=家元の『包丁』の寅ん平、みたいな感じ。
酔っぱらいとかがらっパチがはすっかいになっておどける仕草とかがすんごい似てる。個人的に、すこし前、およそ40代くらい?の家元『大工調べ』の音源を聞いたら、「うわー志ら乃さん!」って思った(逆だけど)。遺伝子ってすごい。


あまりにも久しぶりだったし、またそれが志ら乃さんだった事もあって、落語が始まってからしばし、「わたし、今、生で、落語を聴いている」ってだけで感極まっていた。志ら乃さんから後光がさして見えた。広小路亭の臭いを嗅いだら黒門亭にも行きたくなった。