今日も生きてる

柳家初花鑑賞会 初花のタネ Vol.6

〜お番組〜
柳家ごん坊 『牛ほめ』
柳家初花 『兵庫船』
柳家初花 『落語の星』(初花作)
林家たい平 『二番煎じ』
<お仲入り>
柳家初花 『狐芝居』(小佐田定雄作)


初花さんにもたい平さんにも惚れ直しました。
ス・テ・キ!!!
たい平さんが素晴らしいのはアッタンマイのことですが、初花さんも天晴。
やっぱりこの人を応援しようと心に決めたのは、間違ってなかったなあとファン冥利につきるような可能性が見えました。


難しいネタばかりの挑戦でアラも大きく露見しましたが、それ以上にそれを集中力と気迫で乗り切った精神的な強さを具現化する力、挑戦をいとわない気概に感動。そういう『良さ』は磨いて出来るものじゃないし、大きな舞台でリスクしょってこそ二ツ目として独演会をやっている意味があるのですものね。


特に最後の『狐芝居』。格好よかった。
最初の一言目の声が出た瞬間に空気が変わって、これはいつもの初花さんとは気迫が違うなと思った。厳しいことをいえば『兵庫船』でも『狐芝居』でも、芸事の素養が足りないのが浮き彫りになったけれど、『狐芝居』に関してはそれをカバーして人に聞き入らせるだけの迫力があった。それはとても尊いことだと思う。目からビームでてたよ。


初花さんはこの根多に大銀座落語祭で「一目惚れ」ならぬ「一聴惚れ」してしまい、吉坊さんに稽古をつけてもらいに大阪まで行って来た。吉朝師匠に当てて書き上げられ、吉朝門下しかやらない、しかも芝居入りでかなり難関なこの噺をわざわざ習いにきた初花さんは関西の人から「信じられない」「ようやるね」というような反応をされつつ、吉坊さんに厳しく厳しく直されつつ、難産の末本日ネタ下ろしされたという逸話つき。何十年後、何百年後に「初代柳家初花が2006年に上方から江戸に輸入」ってなるかもよ!


ちなみに今『狐芝居』で検索したら「吉坊『狐芝居』は本当にすごいよ」という文章がすぐ出て来た。これだけ明らかに難しい噺なのに!吉坊さんはすでに東京でも評判高いし、本当に上方落語期待の星ですねー。


そうそう、初花さんの新作『落語の星』。まるっきり新しく最初から最後までちゃんと新作を作るのは初めてだとか。新作ネタおろしとしては十分な完成度だったとおもわれ、特にダレたり無理なところもなく構成的にはすっきりまとまっている。落語好きが高じた頑固親父が9歳の子供を落語家にしようとスパルタ教育するという『巨人の星』落語版。子供の名前は『星寿限無』!名人の口癖がどうとか芸人符丁とかのくすぐりがたくさん出てくるので私には大爆笑だったけど、落語検定に興味がないような方にはちとキビシイところもあるかと思われる。ただ分かる人に面白ければそういう分かる人のためだけにやる根多があってもいいのが落語だと思うので(白鳥たんの『真夜中の襲名』とか!)、時と場所を選んでこれからも改良してやり続けてほしい。でもちゃんと色々な用語を説明しながらだったので案外重症落語ファンじゃない人達も楽しんでたのかな?


たい平さんも初花さんの心意気と姿勢を褒めていらっしゃって、ゲストにしては期待以上にたっぷり『二番煎じ』をやって盛り上げてくれました。たい平さんの芸達者ぶりが発揮される噺が大好きなので、歌入りのこの根多を聞けて、もーーーー脳が溶けるんじゃないかというくらい幸せだった。

満腹感のあるとっても良い会だった。至福。