今日も生きてる

いきいき前座ライブ

平成18年7月21日 於:高輪区民センター区民ホール

ーお番組ー
全員 ごあいさつ
立川らく太 『たらちね』
立川らく次 『宮戸川
ベイビーズ(らくB志らべ) 漫才
<お仲入り>
らく次(男役)・らく太(女役) 踊り

  • 『深川マンボ』(宝塚レビューより)
  • 『だから言ったじゃないの』(松山恵子) 


立川らくB 『芋俵』
立川志らべ 『権助魚』


超長文で本気すぎる詳細レッッポオーーーッット!


かめありでは「だんし・しらく・さんざ・しらの*1」のだんし一門会。しらく一門ファンにとっては苦渋を飲む今日、体が二つあったらねえ。表番組の方は他の仲間にまかせて、チームしらく派を一人離れ、わたくしは心配な方へ・・いや、「何が起こるか分からない不思議空間」を見届けたい方へ。マリオで言ったら、土管入って「デデデデ デデデデ」っていうBGMがかかる地下具合。でも行ったら行ったで意外と知り合いの落語ファンが三人もいたりして。気になるお客の入り具合はというと、かなしいかな「ああ、やっぱり来て良かったな。」らく次さん曰く「今日はお一人様三席までご利用できます」あわわわ・・。


今回はアンケートの設問に「どの演目が一番面白かったか、5点満点で点をつけて下さい」という指示アリ。一番良かったのが堂々のトリ、志らべ『権助魚』だったので5点、ついで『踊り』が4.5点、らく次『宮戸川』4点、らくB『芋俵』と『漫才』が3.5点、らく太『たらちね』が3点。


普段の基準でつけたら、もうちょっと厳しい点数になるだろうけど、今回は<この会の中で>ってことでトップの志らべを満点としての比較でつけました。でも、普段の基準でも、落語に関しては志らべ3.9、らく次3.3、らくB3、らく太2.5くらい行くかな。『権助魚』は本当に面白かったし、<踊り>はすごい破壊力だった。


・ごあいさつ(全員)
志らく一門前座を見る目は完全におかあちゃん目線なので、「皆<しにしに>してたらどうしよう・・」と心配していたら、少なくとも意外と<いきいき>しててまずはホッと胸をなで下ろす。

まずはそれぞれ自己紹介。一番右からこの会の幹事、志らべさん、事務局長のらく次さん*2。二人の入門年月日は同時*3で2000年3月15日*4。 で、2001年入門で年季が一番下のらく太さん、2000年2月入門で一番エライらくBさん。この人達は実年齢もそれぞれらくB志らべ、らく次・らく太が同い年なんだよね*5。あと、志らべさん以外は皆背が低い印象があったけど、並べてみるとらく次さんは志らべさんと比べてもそこまで低くないんだなあとか思った*6


なぜだか中途半端に一瞬だけ大喜利みたいなものをやっていた。全員答えるわけでもなく、話す内容がまとまってない感じで、話題がアッチコッチ飛び、ちょっぴりヒヤヒヤ。前述のようにアンケートに5点満点の点をつける設問があるので、らく次さんが「こいつの落語は2点だな・・とか考えないで何にも考えず頭をからっぽにして楽しんで下さい!」と注意勧告。らくBさんが毒Sツッコミキャラを解放してた。うん、似合う、似合う。


・らく太さん『たらちね』
もはやこの安定感はさすが、開口一番としてしっかりお役目を果たす。「ざーくざくのばーりばり・・ちんちろりんのさーくさく」の妄想特急八五郎のシーンがなく、「嫁さんと間違えて家に女乞食を入れそうになってしまう」、というくだりが代わりに入る。聞いた事のない型。


『恐惶謹言』のオチまでやるのを聞いたのも初めて。もちろんこの言葉自体知らなかったので、最後は何と言っているか聞き取れなかった。個人的には八五郎妄想シーンが大好きなので、それがないのはちょっと物足りない。この分かりにくすぎるオチもどうしたものか。意味が分かれば洒落てはいるんだけどね。安定感はあったが盛り上がり所に欠け、前日の『千早振る』ほどの感心は出来ず。


・らく次さん『宮戸川
もう、らく次『宮戸川』キターーーーーー!って思ったよ!!!この根多をやってくれるという事だけでも、私はもう「来て良かった!」って思えるもん。志らべさんの『権助魚』もそうだけど、こういう根多選びをしてくる君たちが大好きだ!


らく次さんの『宮戸川』は、師匠が苦手克服の宿題として四月の志らく一門会でやらせたもの。その日の記事を抜粋すると、

らく次さんの課題は「色気のある噺を出来るようになる」。しかしらく次さんは最後をそそそそーと逃げるように終わらせてしまい、師匠に「聞いていたお客は、前半あんなに面白かったのに、最後あんなに慌ててすぐ終わっちゃったと思ったよ」と言われてしまう。らく次さんは家で稽古をしてる時その部分を自分で聞いて、「どうしても恥ずかしくなってしまい、こんなものお客さんに聞かせられないと思ってしまったんです」とのこと。


それからというもの、らく次さんのめくるめく艶笑噺チャレンジが始まりまして、ここ3ヶ月の間に『野ざらし』『湯屋番』『転宅』などの噺へ懸命にぶっかっていくらく次さんを見て来たわけですよ。そんなお兄ぃーさんの心意気に一気に惚れてしまったわけですよ!*7


それを乗りこえて今日の『宮戸川』があるんだよーーーー!!
肝心の出来はと言えば、ああ、うううーーん・・ごめん、まだカタイ。今日というこの会自体にも緊張してるのか。さいきん俄然柔らかくなってきたせいで、逆にこれだけ堅くなってるらく次さんを久々に見た気がする。早口に滑舌がついていってなくて、初めて聞く人には何言ってるか分からないまま耳を滑り落ちたセリフがあったと思う*8


師匠から注意された後半のなれそめシーンをしっかりやってくれたおかげで、前回の時のような尻切れの悪さ、熱配分のアンバランスさは感じないし、全体的な面白さは上がっているのだけども、一門会でドカンドカンさせてたほど前半部分が軽快で楽しくなくなってしまったのがとても残念。


一番気になったのは、お花ちゃんがイマイチ可愛くないこと。そういえば『野ざらし』も『湯屋番』も『転宅』も出てくる女の人は、「二十七ッ八、三十デコボコ、乙な中年増」な方々。彼女らの色気出しにはきちんと成功してたのに、やっぱり子供が苦手ならく次さんには少女の色香も難題なのかしら。女言葉は使っているけども、全然女の子に見えなかった。
唯一最後のなれそめシーンの地の口調で「鬢(びん)の油の匂いがふわっ」とか言ってるときに初めてお花ちゃんの存在感を感じられた。にしても、この最後の地の口調、格好よかった・・うっとり。この低い声がたまらない。


ちなみにお花ちゃんが可愛くない代わりに、叔母さんが物凄くかわいくて、そっちにときめきました。ご通家の方にはおなじみ、家元が演ずるおばあちゃんのような可憐なバアサマが降臨してた。お手々の指を広げて胸に当てるあのポーズだよー!きゅんきゅん!


前回の客層は地元の人が多かったと耳にしたけど、今回の客層はいちげんさんじゃない志らく一門会に来ているファンの人が多いのか、少ないながらもお客は結構温かく盛り上がっていて、らく次さんが出て来た時に、「待ってました!」ていうおじさんがいたよ。それで慣れないもんだから、らく次さんが「本当に待ってたんですか?」って疑ってた。


・ベイビーズの漫才は今月の志らく一門会と一緒のネタ&衣装。ただしらくBさんが革靴を忘れたそうで、スーツの足下がスリッパ(笑)前回よりはギクシャクした感じがなくなったものの、やっぱりこのコンビはどうも合ってない。本人達の希望じゃなくてこの会の為に上からの指名で結成されたコンビだからしょうがないけど。らくBさんの新作テイストっぽい脚本がそれなりに面白いのでそれなりに笑える。でもやっぱりあのらくBさんが志らべさんを追って「待て!志らべー!」と言いながらはけていく終わり方はどうにも寒い。本人達も恥ずかしそうに逃げて行く。


・らく次(男役)+らく太(女役) 踊り
予想外に激アツだったのが、この踊り。普通の日本舞踊だと思ったら違いました。踊りと踊りの間には司会として志らべさんも出て来てらく次さんと少し喋る。落語の時と打って変わってめちゃくちゃ楽しそうに「これから踊りますのはまず宝塚レビューから一曲。元は古典の『深川』なんですが同じ『深川』でも『深川マンボ』です。こういう会ですから男二人で奇麗に踊ってもなんなのでコミカルな感じで」と紹介するらく次さん。


日本舞踊を元にした振り付けを歌謡曲の速度に合わせてアップテンポにしたような踊り。男役と女役としての小芝居も入ってて超おっかしい。そして兎に角らく次さんが本当に嬉々としていて微笑ましい。しかもはっきり言ってこの芸歴から考えると、かなりこの人上手い気がする。動きが奇麗だ。らく太さんはまだまだドタバタ気味。


一曲踊り終わって、らく次・らく太「お客さんはともかく我々はいまとっても壮快な気分です。」
志らべさん「これ本当に宝塚でやってたんですか」
らく次さん「もちろん女二人がですけどね、でも宝塚は最近和物やらないんですよ」(←宝塚の話題となれば本当に嬉々として!)
志らべさん「はあ、詳しいですね・・・」(←やや引き気味に、笑)

ともあれ宝塚の話出来てよかったね!らく次さん!(←筋金入りのヅカファン)


続いては、おケイちゃんこと、松山恵子さんの『だから言ったじゃないの』。
一応、「うちの師匠は昔の歌謡曲が大好きで、僕たち弟子もそういう曲に触れる機会が多いんですが」っていうフォローつきだけど、かなり無理のある不思議選曲。社長はいったい何を望んで・・?笑
どういう歌詞かというと、

だから言ったじゃないの

あんた泣いてんのね
だから言ったじゃないの
港の酒場へ飲みにくる
男なんかの言うことを バカね
ほんきにほんきにするなんて
まったくあんたは うぶなのね

(後略)
歌詞参照


このような歌詞に合わせて、らく次さんが「女泣かせのひどい男」、らく太さんが「騙されて涙に暮れる女」を演じながら踊ってました。らく太さんが「よよよ〜・・」って涙を袖でぬぐう形でしなを作って、それをらく次さんが「なんだこのアマ!」みたいな感じで突き飛ばしたりする。もう、笑い死ぬかと!


らくBさん『芋俵』
これは初めて聞いた噺。小僧がかわいくてとても魅力的。ただ他の人物で生き生きしてる人がどうもいなくて、噺全体も盛り上げ所を逸している。らくBさんは懇切丁寧で落語の基本がしっかりしてるだけに、ただそれだけで聞けてしまうけど、やっぱりそれだけでは物足りない感じがしてしまう。基本がしっかり出来上がっていて、きちっきちっとやる芸風だからこそ、この壁をもう一枚つきやぶるのに今伸び悩んでいる所なのだろうか。


・トリ!志らべさん『権助魚』
私の中で志らべさんがトリとってる姿がどうにも想像つかなくて、今回の目玉の一つはこの「トリが志らべさんだったらどーすんの?!どーなんの?!」という興味でした。でも、蓋を開けてみると、すごい!ちゃんと一番面白かった!!文句無しに今日のMVP!何より素晴らしかったのは、この日聞いた落語の中で群を抜いて、全ての登場人物の輪郭がはっきりしていて、鮮やかで、人間臭くて、魅力的だった。


これも3月の一門会*9で師匠にダメ出ししてもらった根多。「権助の前では女の嫉妬部分を出し、旦那の前では我慢してる女房をやってみなさい」という師匠の評、バッチリ反映されてました。お上さんが権助に旦那の文句を言うときに、斜め下から睨み上げる斜に構えた目線がとっても情がこもってて良かったし、旦那様が帰って来てからシュンとしおらしくなる時の愛らしさったらなかった。


極めつけは一門会でも師匠に褒められてた権助!『木乃伊取り』とか入れずに演目を『権助魚』に限っていえば、今まで聞いた中でもマイベスト権助かもしれない。すーーーっごい生身の生命感にあふれてて、イキイキしてて、面白い!「ホッケイドーのさかなァ?」とか言う、その一言のなまり方の絶妙な音が、たまらなく可笑しくて、愛しくて、楽しい。


あとくすぐりの「蛸の足は八ぁっぽん?んじゃあ、イボの数はいぐつかね?」を前振りにしといて、お上さんの前で言う「これはタコちゅう魚でなぁ、足は八ぁっ本、イボぉの数はオラが調査中」あれはキラーな名フレーズだね!ヤラレタ。


そして勿論、志らべオリジナルのオチも上手い!今まで他の人がつけてるオチを幾つか聞いてきた中でも一番しっくりきた。お見事!
ちょっとこの、志らべさんの『権助魚』は録音欲しいくらい。素敵な「音の快楽」満載。またどこかであの『権助』に会いたいと思った。志らべさんの落語にこんなに惚れたのは初めてだなあ。


・とにかく皆本当によくがんばった!!楽しかった。お疲れさま。わたしは多いに満足しました。これからもこの志らく一門を長い目で見守って行こうと、心から思えた会でした。大好き!


次回の「いきいき前座ライブ」は同じ高輪区民センターか、麻布区民センターのどちらかで11/22(水)の予定だそう。これからは「志らく一門会」が修行の場、「いきいき前座ライブ」が発表の場、みたいな感じに定着すると、前座ファンとしては興味深い定点観測が楽しめるのじゃないかしら。彼らたち本人の刺激にもなるだろうしね。

*1:超今更検索避けしてみる

*2:そんな役職が一応あるのね!

*3:面接日は一緒だけど初動で連絡した日はらく次さんのが早かったので香盤ではらく次さんの方が先

*4:『幾代餅』or『紺屋高尾』と一緒だ!

*5:いきいきとか言ってる割に全員じつは三十路

*6:乙女回路発動!

*7:ツバ飛んでる、画面からツバ飛んでるよ・・

*8:例えば、戸を叩きながら言う「小網町の半七です!」が聞こえなくて、「小網町で半鐘」がスッコーンとすべってた

*9:自分は言ってないのでレポート記事を拝借します