今日も生きてる

志らく四季の会(第12回)夏の部

平成18年7月20日 於:善国寺毘沙門天書院

ーお番組ー
立川らく太 『千早振る』
立川志らく 『天災』
<お仲入り>
立川志ら乃 『禁酒番屋
立川志らく 『幾代餅』


志らく四季の会は初めて。毎回レベル高いと聞いてたが、本当にすっばらしい会だった。開口一番含め、一時もダレ場が無かったので4席聞いたのにまったく疲れてなかった。こんな感覚久しぶりだよ。
皆よかった。『千早』3、『天災』4.6、『禁酒』4.6、『幾代』4.7(5点満点)。


ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!テンション高いのでその日のうちに一気書き!
すっごい楽しかったーーーー!!


・7/16一門会で聞いた『高砂や』でも思いましたが、らく太さんうまくなったねー!!字の大きさ上げちゃうくらい上手くなったよ。その前にらく太さんを聞いた時は4月で、その時はもう明らかに「前座だから」というひいき目なしには聞いてられなかったけど、今や普通に安心して楽しめる実力です。すごい。


一緒にいた「寄席には行かない志らくファン」に「あーた、他の前座を見たらいかにらく太さんがすごいか分かりますよ」「志らく一門や花緑一門の前座さんたちなんて、寄席の平均と比べたらスーパー前座だもん。」「だいたい同期が5人いたとしたら聞けるのは2人くらいだもん!」と興奮して本音すぎる事を力説。


数字で言うと、私にとって志らく一門以外の前座平均点が2点、「いわゆる人気者」でない真打の平均点が3点。今回、「うまくなってる!」という<感動点>を加味してらく太さんは3点。多少の技術はあっても好感を持てない真打より、断然こっちが聞きたいといえる。若くて癖の無い分、素直で嫌味が無い。


「千早振る」の名台詞といえば「それが畜生のあさましさ」らしい、の・で・す・が、今まで聞いた人は皆さらっとやってて、それが名台詞として耳に残らなかった。でもらく太さんは「盛り上げる所はしっかり強調してメリハリをつける」という志らくさんの教え通り、たっぷり嫌味にやってくれたので、言葉がスポーンっと入って来て大変すっきり致しました。やっぱり落語はたった一言の珠玉のフレーズをどう演じるかで、単なるお笑いの『ギャグ』とは違う味わいがあるもの。きちんと拾って大事にして欲しいです。


・『天災』と『片棒』はオリジナルのくすぐりを入れられれば入れられるだけ面白い、と思っているので、志らくさんの『天災』は期待通りの面白さ。もちろんオーソドックスなセリフでも志らくさんが言うと可笑しい。「おっかあなんてのはもっとオツなものだ」とか、「かわらが当たって・・・気持ちいい」とかね。

オリジナルでは、
「あんなの化石だよ、ガラパゴスババア。」発想がサイコーです。
「気に入らぬ、事もあろうに、柳かな」→「気に入らぬ、事もあったよ、柳家小さ○」人間だものね!志らくさん落語家ネタ好きよね!


「打ち打擲(ちょうちゃく)する」→「う○ち、ちょくちょくする」志らくさんはあんまり下ネタ好きじゃない・・・と思ってたんですけど・・最近とみに下がかってます。むしろ、これ、志ら乃さんが嬉々として言いそうです。弟子の悪影響か?!


いや、アタイも笑ったけどさ(脳に稲中回路があるから)。あんまり志らくさん「らしく」はないよなあ。むしろ、やっぱり、こういう事は志ら乃さんに言って欲しい。次、志ら乃さんが学校寄席に行く機会があったら、このくすぐり入りの『天災』をかけて小・中学男子のヒーローになって欲しいです。


それと、志らく版名丸先生の怪しさったらない。これは、「名丸先生は常識人なんかではなくて、八五郎を洗脳する新興宗教の教祖的存在」という志らくさんなりの解釈らしい。


見事折伏されて長屋に帰って来る八五郎。隣でケンカが、と聞いて虎さんのうちの前へ行き、「まっぴらごめんねえ、まっぴらごめんねえ」「どうも表でぴらぴら言ってる人がありますな」と名丸先生とのやりとりを一人二役で始める八五郎のシーンは、本当は面白いシーンなはずなのに、たぶんお客さん*1が「八五郎が一人でやってる」と気付かずに「普通の落語としての一人二役」だと思ったみたいで、流れていたのが勿体ない。


・この会では仲入りに赤か白のワイン、または飲めない人にはお茶が一杯ずつ用意され、しかも一口チーズまで頂けます。もともとこの面子だけでも2200円は破格なのエライ。お酒に激弱なわたしはワインなんて飲んだら落語聞けなくなってしまうので、勿論お茶。でも、お茶とチーズという組み合わせは・・おすすめ出来ません。


志ら乃さんの『禁酒番屋』。スッテキ!いやーこれは面白かった。やっぱりこのくすぐり力はすごいよ。「口に含んで運びましょう」「着物にしみこませて運びましょう」・・極めつけが、「中味を問いつめられたら・・・・(声色変えて)女の子にそんな事言っちゃだめだぞ☆」!!!
コアなファン*2としては、「志ら乃、<それ>をやりやがったな!」と力一杯心の中で叫んだと思う。ちなみに『崇徳院』の若旦那が「うん!*3」って言った時も、「さすが、萌えの世界を知るものだ・・」と思った。


「向こう・・向こう・・向こう横町です!」「ずいぶん一人で一手に引き受けてるな」、「松が一番喜ぶ小便をモットーに商売しております!」すばらしい。


ちなみに最初の「なんで禁酒になったか」の説明で、「重役会議で決まった」というセリフが。私は別に面白けりゃどうでもいいですけど、「ああーこういう事言ったら、こんなたった一言でも師匠によっては袖で小言言われたり、客によってはカチンと来たりすんのかねー」と思った。五代目柳家小さん師の録音聞いても「重役会議」って言ってました。無知なのに失礼しました。


志らくさんの『幾代餅』、圧巻。文句無しに今日の一等賞。恋煩いの清さん、出て来た途端にきもい、きもいよ!しかも元気になるとパーンッとはぜちゃったり、驚くとバネのようにボヨヨーンと跳ねたり、しかも幾代との恋が阻まれると「また煩います」と言って再度ハヘェハヘェエときもい清三に・・これだ、これだよ、志らく落語!愛してる。


もちろん、「あいあい」も凄すぎるデフォルメ。しかも幾代が嫁に来る段になっても最後までなかなか癖になって抜けなくなるし・・!このリフレインにハマるとたまんないんだよなー。


そして落語における言葉の魔法発動としか言い様がない、脱力の一言、「幾代ダヨーン」。なにこの言葉の破壊力。天地逆転、デコンストラクションポストモダン。幾代太夫、幾代ダヨーン、確かに似てる。だけど誰も気付かない、気付いても言わないだろう。そんな固定観念をぐしゃっとつぶす志らくさんに惚れた。


幾代に約束してもらってから清三さんの態度がごろっと自信満々に変わり、親方に向かって「ろくえもーーん!ろくえもーーん!」と叫ぶのもイイ。これだけ笑わせておいて年の明けた幾代花魁が来る時は感動の方でもブルッと震えられるのがすごい。すぐ次のくすぐりが待ってるから、本当に一瞬なんだけどね。ひとつだけ欲を言えば幾代太夫があんまり絶世の美女に見えなかったので、もうちょっと声に色艶を乗せて貰いたかったかも。


一番素敵だったのは本来オチなしのこの噺にオリジナルでつけられた、超秀逸なサゲ。あれは本当にニクイ。まさにこういうオチがついてこそ「ぷっはーーー落語聞いたーーー!」というカタルシスがあるってもの。粋です。お見事!


・余談ですが、最近志らく一門の中で短期間に同じ根多がかかってるのをよく聞きます。やっぱり触発しあったり、一門内ブームとかあるんですかね。ここ2、3ヶ月のうち、らく次・志らく志ら乃で『禁酒番屋』、らく次・らく太で『千早振る』、らく次・らくB+まだ聞いてないけど根多出しが決まってる志ら乃『湯屋番』。「こんな所が<らしい>なあ」とか、「こっちのはここが面白いなあ」とか、いろいろ違いを楽しんだり。ってお前がコア過ぎなんだよというツッコミね。

*1:「笑い」の感じからいって普段はあまり落語慣れしてない人が多そうだった

*2:「8/29の萌え落語って何なんだろう・・」って今から噂し合ってるような人々

*3:ゼッタイ後ろに“はぁと”ついてた