今日も生きてる

大銀座落語祭2006“おもしろ怪談噺の会”

17:00〜18:30くらい
<第一部>
志らくVS白鳥
立川志らく 『死神』
三遊亭白鳥 『腹ペコ奇談』

18:40〜20:15くらい
<第二部>
笑点メンバーによる怪談噺
林家たい平 『お菊の皿
三遊亭好楽 『一眼国』
三遊亭楽太郎 『お化け長屋』


感想書き終わり。


・怪談ネタはあまり演じない師匠なので、仲間内では『死神』であろうと前予想をたてられてましたが、持ってるかどうかで言えば、ご本人曰く、「『真景累ヶ淵』とか『牡丹燈籠』とかちゃんと出来るんです、昇太兄さんみたいにノート見なくてもちゃんと出来る」*1だそうです。


マクラでは、「(前座はいないので)なんだか私が白鳥と笑点メンバーの開口一番みたい。こんな暖まっていない客の前でやるのは久しぶりです。」「志らくと白鳥に笑点メンバーだなんて、これを企画した人はどういう客層を目当てにしてるのか」「しかも志らく・白鳥二人会がどれくらいおかしいかって、談志・川柳二人会みたいなもんだ。」と言ってました。


わはは。でもここのチケット買うような人たちの3割は、志らくと白鳥見て仲入りで抜けて演舞場のフィナーレも見に行くような重症落語ファンだから平気、平気。かくいう私も、志らくファンで、白鳥ファンでたい平ファンですよ。ついでに言えば談志も川柳も好きです。少なくとも笑点を欠かさず見ているような人たちの中で大銀座のチケット争奪戦に参加した人はむしろ少数派ではないか・・。


志らく師匠の『死神』は二回目。ピンで聞いた時はシネマ落語の前ふりだったので当然あっさりでしたが、今回は前より落語ファンが喜びそうなくすぐり多めでサービスしている感じでした。


死神の呪文も、いつもの「アジャラモクレン金○日、どうして貴方は・・(放送禁止)」の他に「アジャラモクレン円楽党、その昔落語ベアーズと名乗っていた事を誰か覚えていますか?*2」「アジャラモクレン立川流、文字助と里う馬どちらが一番弟子ですか?*3」の三本立て。


死神の物まねは圓生志ん朝、談志と、あともう一人がいつも判らなくなる、誰だっけ?他に笑ったくすぐりは(談志の物まねをしながら)「死神の肯定」、あと「小死神なんて襲名したくない」「助けて下さいよ、しーさん」。好みの問題で、軽い『死神』はいまいち好きじゃない。だから志らく師匠の死神は楽しいけど物足りない。


来年怪談で志らく師匠を使う企画があったら、1時間半でシネマ落語『オーメン』やって欲しいなあ。


・とにかくダントツ一等賞は白鳥『腹ペコ奇談』。無茶な落語の超大作。爆笑派、新作派の枠を越えて「無茶派」ってどうですか。シェーのような格好をして「これは圓生ゆずりの額縁の仕草」とか、「志ん朝ゆずりのイカフライ入りコッペパンを食べる仕草」とか、もうそこまで行くと、もうどうにでもして下さいと思います。


新作なので導入部を少し触れると、「貧乏な旅芸人の親子が人里離れた山奥で洋館を見つけ、空腹に耐えかねて泥棒に入ろうとしてみると、そこには恐怖の罠が待っていた」という、一応怪談仕立てのお話。


白鳥さんといえば、扇子・手ぬぐい×2の他に座布団を使うのはいつもの事。しかしクライマックスの座布団の使い方は見た人にしか教えたくないので書きません。これはもう白鳥版『トキそば』どころの騒ぎじゃないですよ。高座の上だけでなく、舞台上を所狭しと動き回るクライマックスで、白鳥さんもあまりの運動量に息切れしてましたが、私もひきつけのように笑いが止まらなくてゼーゼーなりました。他にも見た事のない新しい落語仕草を開発しまくってました。


ちなみに道に迷って銀座の駅から時事通信ホールに来るのに40分かかり、しかも警備員さんに道聞いたら、裸の大将的見かけから「オカシイ」人だと思われてウソの道を教えられた、という白鳥さん。その事を他の出演者にさんざ「ありえない」となじられ、お客さんに「地図判りにくいですよねえ?」と共感を求めていました。じつは私こそ1時間迷って辿り着いたので、白鳥さん側に深く共感しました。



・ナント、たい平さんは『お菊の皿』ネタ下ろし。直前まで楽屋で昇太さんやら色んな師匠に稽古つけてもらってたとか。一場面、一瞬絶句してしまった所を除けば、まったくそうとは思えない出来の楽しい一席。


「芸」に目覚めてからのお菊さんが出てくる時は下座さんの出囃子つき、皿の数え方でもたい平さんの持ちネタであるモノマネで披露。滝口順平が出て来たときは思わず最前列で「滝口順平来たー!」と言ってしまいました。しかも、正にこの夏どこかで聞きたいと思っていた<たい平名物>「花火の音」も聞けて大満足。今までこの根多をこの人がやってなかったのが不思議な位、華やかで声帯模写が得意なたい平さんの芸風を如何無く魅せてくれた一席。


・と、一つ飛ばしてなんですが(つまり、推して知るべし)、楽太郎さんの『お化け長屋』もかなり面白かったです。口調がトントントーンと生き生きしていて、「ぶらさがったおばあさん」や「雨振らし隊」など、お化け長屋の光景が逐一立体的に浮かんでとても楽しめました。

*1:この回の前に昇太師が『牡丹燈籠』をネタ下ろしするが、途中で登場人物の名前が判らなくなって、ナント舞台上でノートを見てしまった(笑)

*2:大日本落語すみれ会→落語円楽党→落語ベアーズ→円楽一門会と正式名称が変わったらしいです。円楽党は俗称なのですね。ベアーズってやっぱり「がんばれ」なのかな・・

*3:正式に一番早く来た弟子は里う馬、文字助は最初の師匠・三升家小勝6没後に談志に入門したので里う馬より年季は長い