今日も生きてる

ル・プティ・ニ寄席(第2回)

平成18年6月26日 於:カフェ ル・プティ・ニ(目白)

ーお番組ー
入船亭遊一 『厩火事
入船亭扇里 『ねずみ』


終演後はケーキとお茶、またはコーヒーつき。ここのケーキはおいしいです。
この二人は何がいいって、なーーごーーむーーなあー。
やっぱり、安心・たのしい・しあわせな気持ちで帰れる柳家ブランドって、あると思うよ。
落語もご歓談タイムも、適度な長さで、だらけずあせらず、熱すぎず、寒すぎず。とても平和な気持ちで家路に着いた。いい会だった。続いてほしいな。しあわせ。


以下、会の感想というより9割が作文『私は如何にして“厩火事”を愛するようになったか』。


<今日のプププ>
遊一さん「この会のメインは『トリ』のケーキとお飲み物ですから、どうぞそちらをお楽しみください」
扇里さん「このネタは師匠・扇橋が30日に紀伊国屋寄席でやりますからそちらでもっとちゃんとしたものを聞いてください」
・・きみたちは幇間か?!


<オレとオマエと厩火事
現行で、「心のベストテン第一位はこんな根多だった〜!*1」というのが、
ダントツで『厩火事』な私ですが、その発端は何を隠そう、あの名人上手の一席に間に合って・・・ではなくて、ニフティぽっどきゃすてぃんぐ落語で聞いた遊一さんの一席からなのです。


この録音、結構かんでたりもするので、ご本人としてはけして満を持した出来ではなかったであろうと思われますし、わたしだってこれをすごい名演だった!とは言いません。しかし、当時本当に落語聞き始めたばかりだった私にとっては、なんだかこれで『厩火事』大好き!!スイッチが入っちゃったんだから、しょうがない。淡くても「初恋」は「初恋」、てなもんで、後々他のお師匠方の『厩火事』を好きになっても、それはそれ、これはこれ。データが上書き保存されないまま、ずっと思い入れがある「この人+この噺」でした。


ところが、基本的には根多を狙っていけないのが落語ですから、まだ遊一さんの『厩火事』を生で聞いた事がなかったんですね。だから、「いつか聞ければラッキーなのにね」くらいに思っていた所、こんなに早くも聞けるとは。マクラに振る縁結びの神様の小咄も録音と一緒だったので、「わ、わ、わ、わ、もしかして厩火事?」と、いち早くどきどきし、「なんだいおさきさん」と入ったところで『厩火事』確定!声を出さずに口の形だけで「わあ、厩火事だー」と思わずつぶやき、うれしすぎて顔がニヤけちゃうのをがんばって抑えました。


ああーーーきみの名は『厩火事』!一言一句すべてが絶妙。もう、もう、なんて素敵な噺なんだろう。おさきちゃんかわいい。旦那さんもたまらん。サゲ最高。もう、「いとしさとせつなさと心強さと」がつまってますね。私は「深刻な感情がうずまいてる状況にコメディーをかぶせてしまう事でにじみ出た部分が余計に強調される」という構図が大好きで、映画だと『American Splendor』『Love Actually』が、リンク先の通り勝手に訳をつけるくらい好き。落語も同じラインで、とくにこの『厩火事』は最たる物だと思う。


ちなみに終演後のご歓談タイムは二つの卓にお二人が別れて座るのだけど、今回は遊一さんとご一緒させて頂きまして、某日の池袋で『子ほめ』をやろうとマクラを振っていたら入場する私が目に入って、「ああ、この人にはもう『子ほめ』を聞かせてる!」と思って急遽違うネタにした日があったと聞いてびっくり。どうりでその日は、「あれ、このマクラからこの噺??」と思ったのだった。しかし、まさかそれが自分のせいだったとは思わなんだ・・。


その時は『たらちね』だったのだけど、前回のこの会で、「女の人が出てくる噺が好き」そして、「遊一さんの『厩火事』が好きだから聞いてみたい」と言ったので、そんな言葉を汲んで下さったのかもしれない。告白してみるものだ。遊一さん、ありがとう。


一昨日の談修さんの会でも、らくBさんに「『大安売り』やろうと思ってたのですが、葵寿司にいらっしゃったお客さんだったので『近日息子』にしたら、昨日の下丸子にもいらっしゃってたんですね。かえって近い日にちでかぶってしまい申し訳ない」と言われて恐縮した。
これだけ沢山聞いてればネタがかぶるのはこちらも覚悟の上。だけど、何よりその気持ちがうれしいですね。

*1:今夜はブギー・バック』の節でお読み下さい