今日も生きてる

みなと毎月落語会〜選抜二つ目競演会〜

平成18年6月20日 於:六本木・麻布区民センター

ーお番組ー
立川らく次 『湯屋番』
林家きくお 『新聞記事』
立川志ら乃 『崇徳院
<お仲入り>
志ら乃・きくお・志の吉・初花 『ドッキリ!男だらけの抜き打ち俳句大会!』*1
(テーマ:梅雨 司会進行:志ら乃
柳家初花 『悋気の独楽』
立川志の吉 『長短』

オオゲサに言うといまだにトラウマな第一回に比べてなんて平和な落語会なんだ・・たっぷりすぎず、あっさりすぎず、丁度いいお湯加減。まあ、この面子だったらどんな順番でも大丈夫だろうなーと思ってた通り。


・そして開口一番が今月初らく次さんだったので幸せです。今日は来る気がしてた*2。そしてこういう勘は結構当たる。明日の志らくのピンは志らべさんな気がする。志らく一門・立川企画関係は事前に分かる正規の出演者・演目と同じくらい、誰が開口一番やるかが前座ファンにとっては気になる所だよ・・。開口一番の場合ほとんど二択だけどね。


『湯屋番』、先月の一門会『野ざらし』から数えて「チャレンジらく次!色気を出そう!編-パート2-」だわ。私は例によって例のごとく遅刻したので(ごめんなさい!ごめんなさい!)、若旦那が番頭に入って妄想爆発させてる下りから。会場入ると既に客席がポッカポカにあったかくて「やった、らく次さん、やったね!」と私の中のマギシステム「母」が頭をもたげて喜ぶ。


はっきり言って今日のお客さんはけして甘くなかった。というか、かなり甘い女の人達となかなか笑ってくれない男の人達とで、極端に分かれていた。だけどその「堅い方の人達」がらく次さんには結構うけていて、「下手すると『某兄さん』より受けてたんじゃない?」といってしまっても、あながち母さんの色眼鏡じゃないと思うのよ。


あのらく次さんの堅さは本当にどこ行っちゃったのかと思うような急成長ぶりにうれしい限り。もう堅くないし、色気もアリアリだし、妄想するヒトの狂いっぷりも板についてきた。師匠ゆずりだけじゃない、らく次オリジナルの「気の利く女中」くすぐりも良かったし、頑張ってるねぇー・・と、女性ホルモンの緊急指令で母乳が出そうになる母さんでした。


ちなみに今日は一段と早口でした。志ら乃さんがスピードダウンした今、らく次さんの速さが余計に目立つ(耳立つ?)。志ら乃さんの声は一音ごとの主張が強いから速くても聴きやすいけど、らく次さんは声が平板なので、ちょっと不安要素かも知れないですね。まあ、まだ前座だしね。あれだけやれれば十分に超前座級だし、後ろに師匠の影響が見えるのもご愛嬌だよ。


・はて?開口一番でこれだけ書いてきくお兄さんどうしよう・・笑。きくおさんの『新聞記事』は三回目です。最初に聞いた時はけっこう笑ったのですが、二度三度となるとちょっと・・。『洒落小町』とかこういうネタは、何度も聞いて楽しいっていうのはナカナカ難しいんじゃないかな。他の人の『新聞記事』のサゲは「衣」しか聞いた事ないんだけど、きくおさんのは違う。あのサゲはオリジナルなのかな。他の人のサゲより好きです。「オウム返し言い間違い」部分、ネタは面白いのに、どうもリズムが悪くて辛かった。でも、あくまで愛をこめて言えばきくおさんは「素」が一番面白いよ(笑)そしておばさん受けがホントよすぎです。おばさん達はとっても楽しそうに聞いてたもの。愛されるキャラが最大の武器だ。


志ら乃さんのマクラは例の大阪仕事の話。志ら乃さんが「仕事で大阪の方に行きまして」と言っただけで、耐え切れずにフライングでプッと吹き出してしまった。今日は今まで入れてなかった「花王」エピソードもすこし加わっていたぞ。


何のネタをやるかはリクエストをとる。曰く、「『崇徳院』と『火焔太鼓』どっちがいいですか?無難なのがよかったら『時そば』か『たぬき』やります」。『火焔太鼓』はまた聞きたかったけど、どうせならまだ誰のも聞いた事がない『崇徳院』に一票。結果、『崇徳院』に。わーい!初めて聞くのはやっぱり好きな人がいいもんね!


熊さんが若旦那の話を聞く前に「でも若旦那の話はつまんねえからなー、じゃあ俺がくすぐりを入れます」といって『厩火事』のおさきさんのごとく話の腰をポキポキ折るようなアホくすぐりを連発し、若旦那に「もうくすぐりは入れなくていいよ!」と熊さんが言われる流れが良かった。


今日の名フレーズ「英語で?」「諸注意」「みかん踏んづけた」「うん(はぁと)」←激カワ!。「ドイツ」「フランス」は最初聞き取れなくて意味が分からず、他のお客さんもついてってなかったけど、後から友達に聞いてやっとガッテンした。ちょっとあの速さで聞いて洒落に気付くのにはヒネリが難し過ぎたか。でも気付きさえすれば、すごく上手くてニヤリと出来るくすぐりなので、なんとか分かりやすい言い方にして今後とも削らないで欲しい。


サゲに向かっての盛り上げ方が志ら乃さんは本当にうまいなあー。床屋で偶然出会った二人のテンションがぐわーーーっと上がって、奇麗にオチがついて、ああーーーっ痒い所に手が届いたーっ!!というカタルシスが鮮やか。こう、正にスポーツでいうゴールの瞬間みたい。スラダンで言えば宮城が三井にパスして外からのスリーポイント


・幕が上がるとなぜか笑点のように4人が並んで座っていてびっくり!何、大喜利??と思えば、自己紹介&ドッキリ句会!というのも、この企画をやるのを事前に知っていたのは司会の志ら乃さんだけだったから。上手い具合に四人の着物もちょうど色が分かれててキレイ。


志ら乃「えーではまず例題と致しまして、私から。梅雨時、吉原にいる男が雨が上がるのを待っている・・そんな様子で一句。「つねられて はれるのを待つ 雨上がり」
余りによく出来てるので、「本当にそれ今考えたの?前々から考えてたんじゃないの?」とつっこまれ、白状する志ら乃さん。

志ら乃「昨日うちに立川企画からFAXがきまして」
きくお・志の吉「ええーー!うちには来なかったよ!」
初花「ていうか、そもそもうちにはFAXがないですよ!」
全員「いや、買えよ!」
初花さん、素でナイス落ち担当!最初から意外と(?)妙に息のあった四人。


志ら乃「大丈夫なのかな・・きくお兄さんなんて『俳句って5・7・5?』って聞いてましたからね」
きくお「だって志ら乃嘘教えたりするから一応聞いたんだよ*3。俺だって大学は出てるよ。コネとかじゃないよ!」
全員「ここ四人は皆出てるよ!」*4
きくお兄さん、さすがお家芸!


結局、抜き打ちでまともな答えを言えたのは初花さんだけ。初花さん、ボケでも大活躍で輝いてたよー。

梅雨どきに 人ごみに咲く 傘の花

ステキ一等賞!
あと、「紫陽花の つゆの影には かたむつり」だったかな?他のメンバーはひどいよ。吉野屋は 牛丼つゆだく おいしいな、とかそういう・・・。しかも何か、おし○こがどうとか下ネタ・・ってソレ、俳句になってないどころのレベルじゃないよ、きくお兄さん!


・初花さんの出番。句会で堅かったお客さんがとっても柔らかくなってて、いい空気。しかも初花さんは前述の活躍もあって、「よし、この人さっきは面白かったぞ」という、お客の受け入れ態勢万全といった感じ。暖かい好感を演者に対して持ってる空気って、客席にいても分かるよね。


マクラではメガネ男子ネタと、初聞き、「恐怖!なぞのパンツ事件」でげらげら。「おし○ことかパンツとかばっかりで今日はすみません」と謝っていた。志ら乃さんもくすぐり、及び、句会でもパンツ、パンツ言ってたもんなぁ、確かにヒドイ下ネタパーセンテージ(笑)


メガネ男子のマクラといい、『悋気の独楽』といい、4回目以上なので、普通に楽しむ目線の他に、私が「おもしれー!」と思っているものを見せびらかしたい感じで、どうよ、どうよ?うちの初花どうよ?という目線があり、特にトナリの志らくファン仲間の反応が気になった。結果は勿論、大受けしてくれてて、ね、ね、面白かったでしょ?と私の中の「母さん」が喜んでいた(またかよ)。


あーお妾さんかわいいな。独楽の説明に入ると、女つぽさがガクンとなくなって地の初花さんに見える事がある、と前の感想で書いたけど、今回はきちんと最後までお妾さんのままだった。お上さんも相変わらずドギツクていい。特に定吉が肩叩きして、旦那の事がバレちゃってからのお上さんの顔、すごすぎ。あの顔はいつもよりすごかった。


初花さんの『悋気の独楽』好きだ、という気持ちは変わらないし、今日も十分楽しかったし、他のお客さんにも普通に受けてたけど、今まで小さい会で見たときと比べると、全体的に元気がないというか、メリハリがくっきりしてないというか、のびのびやれてない感じもした。あのアリーナ席のせいかな!


・ここの会場では最前の6列くらい補助席みたいなイスが並んでて、その後ろから段になってる座席が続いている。最前部分には段差がないから見にくいし、なんとなく誰も座らない。スキスキのB級映画館で、前が空いてても誰も座らないような感じ。そのため演者とお客さんの間に川があるみたいでビッミョーな距離感。演者たちはそれがやりにくいと言っていて、トリの志の吉兄さん、マクラでその席の事を「アリーナ席」と命名。


この『長短』、はっきり言ってすごく良い出来だった。そうあえて言い切るのは元々これ、あんまり好きじゃない噺なので、ここまで拒否反応せずに聞けた事がなかったから。今までこれを十八番としているのであろう、名だたる真打(「し○ご」とか「ご○た○○」とか)で聞いてきたんだけど、どうも駄目だった。志の吉さんのが全然よかった。志の吉さんの「長さん」テンポの我慢具合は素晴らしかったし、ともすればウザすぎてしまう長さんを上手い具合に抑えてやってくれた。


名フレーズ一等賞は「口の中でう○こ」。今日は本当に下多いね!


・終演後、仲間とご飯食べながら、「志らく一門の事ばっか考えてる」という話。他の人の『天狗裁き』聞きながら、けしてその人が面白くないわけじゃないのに、「ああ、これをこしらさんがやったら絶対面白い」と思ったり、今日の『長短』でも志の吉さんナイス!と思いながら、「これを志ら乃さんがやったらどうなるんだろう?」という事を考えてしまったよ、と話す。


重症です・・!いつのまにか、10人もお腹を痛めた気になってます・・。「こしら→『天狗裁き』、志ら乃→『長短』やってください、って不動院でリクエストすれば?」と言われたけど、それアンケートに書いたら「その日の感想」じゃなくて手紙だよね!ちなみに志ら乃→『蛙茶番』もやってほしい。


そのくせ大好きすぎて会場でかち合ってもけっして目を合わせられないという、脳が中学生なわたくし。「はなび」の時、もぎりは志ら乃さんで席案内志ららさんだったけど、終始目は合わさず*5、出演者が揃ってお出迎えする終演後も、脱兎のごとく顔を伏せたまま逃げさる。後日行った友達から「志らくさんが葵寿司の会で顔を憶えててくれたので挨拶した」という話を聞いて、「あ、むしろそれが普通の大人の対応だよね!目からウロコ!」と思った。


今日も会場出る時出演者が揃って客出ししてくれていたのだが、「ああいつも来てる人だ」という視線を右や左のお大尽から感じつつも、頑なに初花さんの方しか見れない私であった。中学生じゃないんだから、会釈くらいしてもいいよね・・。

*1:注:本当はこんなタイトルついてません

*2:人はそれを電波系と呼ぶよ?

*3:志ら乃さん、超うそ教えそーー!

*4:きくおさんはマクラで毎回「木久藏と違って大学を出てるんです」と言う。この後、志の吉さんなど、他の四人も「大学は出てます」とネタにしていたのがおかしかった。

*5:志ら乃さんからチケット買ったのにね・・