今日も生きてる

東西噺家倶楽部〜三人寄れば文殊の笑い噺〜其の二

平成18年6月16日 於:日本橋たいめいけん4F

ーお番組ー
桂かい枝 『時うどん』
三遊亭好二郎 『大山詣り
<お仲入り>
桂かい枝 『胴乱の幸助』
立川志ら乃 『木乃伊取り』


この日は既に違う会(かなりオオモノ!)のチケットをとっていました。んが、しかし、前から「志ら乃さんの『木乃伊取り』が観たい、観たい」と事ある毎にボヤいていた所、先月の不動院でご当人から「16日、『木乃伊取り』やりますよ!」とこっそり(?)ネタ出しされ、「よし、そいつぁ受けて立つしかねえ!あう!こちとら江戸っ子でえ!」と勝手に義務感を感じて前述のチケットをキャンセル。『立川志ら乃の噺三席』でずずいっと惚れ直し、裏番組への未練が吹っ切れた後、ポチっとこの日の前売を予約した。


それだけ楽しみにした『木乃伊取り』、それでも期待を裏切らない素晴らしさ。うーーーん、志らく師匠と志ら乃さんのクオリティにはまりすぎて他の人を見る目聞く耳が麻痺してきそうだ・・。5月26日の談志一門会で家元の『木乃伊取り』も聞いていたと思われ、それ以前の志ら乃版『木乃伊取り』も聞いていた人によると、やっぱり家元の影響も入ったんじゃないかな、とのこと。わたしは前のバージョンは聞いてないけど、5/26の家元は聞いてるので権助が家元入ってる気がするなあーと思った。あと「人が話してるのにうるさい!」と三味線・太鼓を止めるシーンって立川流以外の人もやるのかしらん?あれも生の下座さんが入る家元演出を先に見てるのでお囃子が権助の話を邪魔して入るのを具体的に想像しやすかった。


時間がものすごく押していたので、落語界最速*1の喋りで乗り切ってしまうかなと思いきや、そこは喋りの技術に頼らず、ピンポイント編集の妙で短くしてマクラなしで約30分。「テンポをあげすぎない」「くすぐりに頼りすぎない」という、自分の芸風を再構築する課題に取り組んでいる今現在進行形の姿勢も見え、ああ、やっぱりいいなぁああ志ら乃さん、と感心感心また感心。


派手なくすぐりは控えめで、トントンとキレよくコンパクトに、ムダなくソツなく、はっきりくっきりした芝居で大旦那、お上さん、番頭、頭、一八、権助、若旦那と話が進み、クライマックスは友達から評判を聞いていた「かしく花魁」登場!!!これが本当にクライマックス!テンション上がり切った。もう、なんて、なんて色っぽいのでしょう!


家元は甘酸っぱい可憐さを残した小悪魔的少女を思わせるかしく花魁だったのだが、志ら乃さんのかしく花魁はもうちょっと大人の色香がふわふわ、年増とは行かずとも20代前半から半ばの「キレイなお姉さん」という感じ。華に例えるなら水辺に微笑むカキツバタ。妖艶というほど重苦しくなく、百合や水仙ほどにはこざっぱりしすぎず、凛としていて、瑞々しく、さわやかさを残した色気があり・・・あーーー権助ならずともたまらない。また志ら乃さんはもともとオットコらしい声量と口調なので、その声を抑えてちょっとハスキーな女声なんて出された日にゃあアータ!もーーー悶絶!男役とのギャップに身がよじれます!


実際身をよじっていたのは私だけでなく、他の噺家目当てでいらっしゃっていたある男性が、この志ら乃版かしく花魁に当てられてしまい、最前列で色香をマトモに受けて、照れまくっていました。
かしく花魁が決め台詞の「す・き」を放ち、「あたし、そういう堅い人、だ・い・す・き」、「手を握って・・」とささやかれる度にきゃああああーーーーハズカシイイイイと悶えました。むっはーーー・・・!!本当に噂通りの物凄い破壊力だった。志ら乃さん、だ・い・す・き!!

*1:私が聞いてきた全噺家さんの中で、聴き手に聞かせながらも速く喋る、という口調の限度が最速