今日も生きてる

みなと毎月落語会〜選抜二つ目競演会〜

平成18年4月21日 於:六本木・麻布区民センター


ー番組ー

立川志らべ 『持参金』(開口一番)
台所鬼〆 『堀墓穴』
三遊亭歌彦 『阿武松
<仲入り>
三遊亭王楽 『竹の水仙
立川志ら乃 『大工調べ』

はいはいはい、また遅刻しましたよ(十中八九の女)。先に来ていた知り合い曰く志らべさんの開口一番がとてもよかったとか。勿体ない。ごめんなさいね。鬼〆さんに変わるところで入場、仲入り後さらに最前列へ移動。


誰とも示し合わせてないのに自分含め5人の立川流というか志らく志らく一門贔屓がたまたま集結して最前列を占拠。うち二人はもともと来る予定ではなかったが、「前日の志らく四季の会で志ら乃さんがチケットを叩き売りしてたから来た」という。


最前列5人がまとめて笑うとこ一緒で、志ら乃さんにばっかり大喜びしてて、前から見ててとっても怪しかったと思う。みなさん立川企画自体の常連なので、会場を出る時スタッフに「いつもありがとうございます」とか言われていた。全員立川流以外も見まくっている人達なので、それだけ落語に身銭を切り、時間と労力を支払っている分、終演後の感想トークが、熱い、濃い、そして辛口!笑
そう、今回の会の全員の感想は残念ながら、「志ら乃さんがいなかったら今日はありえなかったね」という辛口トークが爆発した。


他の人達の実力がけしてまずかったわけではない。歌彦さんの『阿武松』なんて充分に立派だった。しかしまず構成として、長くて盛り上がりにかける噺が続きすぎたことが難点。なんと、この長さの落語会なのに、「色物がいないとやっぱり持たないかも」「疲れた」と言って仲入りで帰る団体がいた。
この点に関して出た意見;
「やっぱりこの長さだったら真打入れないと持たないのかも」「それか色物入れるか」「いや、志ららさんが漫談すればいいんじゃない?」「志ららさん色物扱いかよ!」
でも立川流がかぶると二ツ目競演会っていう主旨が成り立たないね・・


特に某噺家さんに対する辛辣な意見が集中していて、たいして好きでもないのに思わず弁護側に回ってしまった。「いや、二ツ目は可能性の時代だよ。それぞれのいいとこ見てあげようよ・・!」とか。


いつもはむしろ、「Aさんが出てくるまでガマン大会だった」「あまりの聞いてられなさに、Bさん、もう無理・・ってメモに思わず書いちゃった」「つまんないと寝ちゃう」「眠すぎて憶えてない」などとキツいことを言っているので、「今日はずいぶん落語愛にあふれてるんだね」と聞いてる人に言われた。その心は真打に厳しく、前座、二ツ目に優しく、です。


とにかく、そんな事情もあって、今日の志ら乃さんには心から「待ってました!」と思ったし、やっぱり、絶対、いちばん輝いていました。それまでダルダルに盛り下がっていた会場を、完全に持っていった。その鮮やかさたるや、本当にすごかったんです。


今回、頂けなかったことのもう一つには、高座中にべらべら喋るおばあ・おじい客が3組くらいいたこと。その上、お喋りはしないまでも、あんまり落語なんて行かないんだけど、近くなんで来てみました、というようないちげんの地元客が多く、アウェーもいいとこ。


志ら乃さんが、座布団の上に腹這いになり、まな板の上の鮮魚のごとくのたうっていても*1、なお無視してお喋りを続けるツワモノたちですよ!志ら乃さん得意の聞き間違いネタで棟梁&与太郎の掛け合いはものすっごい面白いのに、じさま・ばさまはちーとも笑ってくれない。


そんな最前以外のお客さん達がだ、志ら乃さん演ずる棟梁の啖呵が始まると、その余りのマシンガントーク、ほとばしる気迫、粋な言葉の連射砲撃、連続、連続、連続、連続に、だんだん静まり返るお喋りと反比例して感嘆の声が波紋のように広がっていき、それにかぶって拍手のさざなみが打ち寄せてはやがて雨になり風になり嵐に!!
勝ったッ!志ら乃が勝った・・!ようやったぞーー志ら乃ォー!!


そんなちょっとしたセコンド気分で志ら乃さんの勝利がうれしい、記憶に残る一席とはこの事。不動院に続き六本木はまた大炎上。志ら乃さんが今まで外れなしすぎですごいわ。出来るなら一席も見逃したくない位。志らく一門の独創性と談志一門の写実性、その二つがバランスよく身に付いてるなんてホント反則だよ、この人は。


まあ、あのテンポはやっぱりお年寄りには早過ぎたのかなあ。かくいう私も、以前にフラ談次さんの懇切丁寧な『大工調べ』を聞いていなかったら理解度が違ったかもしれない。


それこそ憶え切れないほど大量に、おっかしいくすぐりが超高速・高密度でいっぱい入っていたのだが、特に「長い物にはまかれろ」→「なげえマカロニ!?」の破壊力に最前5人は悶絶、終演後も賛辞の嵐。
食事に行った先のイタリア料理店でも「マカロニないの?なげえマカロニ!」とかゆってた。たぶんこれから数ヶ月「なげえマカロニ!」で笑える自信がある。
それに私は落語の何が好きって、サゲのカタルシスが好きなので、『大工調べ』の途中まででも、サゲをちゃんとつけててよかった。


余談だが、近日話題の落語会や寄席で、この最前列に座った5人が誰も行ってないものがほとんどなくて笑った。銀座らくごアーベント、立川藤志楼主任の末廣中席、桂三枝主任の鈴本中席、真打披露興行、どれかに誰かは行っている。
志ら乃さん以外には辛口言っちゃったけど、別にひいきなのは立川流だからじゃないんだぜ。

*1:宮城テレビの番組で家屋の耐震性を体当たりレポート、狭い床下にムリヤリ潜り込んだ描写をマクラで披露