今日も生きてる

大川公一がアツイ!


せんだっての文芸よもやま話に出て来たのでまとめて書きたくなってしまったのだが、大川公一(きみかず)というひとがいる。

わたしが、あーいう風に将来なれたら本望だなあと思う、母校の現校長にして、御年58歳で私の最年長友人(本人の手紙でわたしのこと「友人」て書いてあったから勝手な自称じゃないよ!)。わたしが高校生だった時にはまだ教壇に立っていて、古文を教えて頂いた、マイアカデミックヒーローの一人。
年相応のふてぶてしさと穏やかさ、水面光る知識の泉をたたえつつも、目をキラキラさせながら好きなもの追っかけて今も生きている。
彼の朗読ときたらそれはそれは美しく、『源氏物語』の桐壺更衣死せる回を詠んでは「みなさん、これが日本文学史に残る名文ですよ、いや実に切なくて美しい。涙が出そうです。」
松尾芭蕉の『奥の細道』朗読は特に素晴らしくて、ライブやって欲しいくらいです。わたし、最後の授業録音したしね!

彼の授業中の発言・引用が興味深すぎて、「大川メモ」をとるために新しいノート一冊買ったくらい。
「ぼくがもっとフランス語が出来れば、是非サルトルを原書で読んでみたいですね。訳書だけでもこんなに素晴らしいから、さぞや原書はすごいと思うんだ」とあなたが言ったから、「先生が出来なかったことは私がやるっきゃない!(←宿命的にこういう思考回路!)」と思って第二外国語はフランス語にしたんです。

大川先生の著作物

『竹林の隠者-富士正晴の生涯』
『 攻めダルマ蔦さん-池田高校・蔦文也監督遠望 』

大川先生の魅力のひとつは圧倒的な素直さだ。富士正晴ラブ(はぁと)、蔦監督ラブ(はぁと)、だけで本書いちゃいました!ていうのが伝わってきて、本気と書いてマジ!の真心が詰まっている。ヒーローに憧れて、追っかけて、富士氏・蔦監督両方ともに著書完成間際で先立たれてしまい、ならばなおさら涙を呑んで、良い本を遺し世に問わねばと心に決めた先生。カッチョイイです。しかも蔦監督の方はそれなりに収益があったので少年野球に寄付して、「足みじかおじさんだけどね」とかゆってた!

大川先生の特筆すべき名言
・「結局ねえ、『斜陽』とかそりゃあ名作だけどさ、エライやつがダメになる話よりも、ダメなやつががんばって成長する話の方が、心に響くよねえ。」
(共感カコワルイの自意識を吹き飛ばす、この年でいう『結局』こそ重みがある発言)

・「僕は今まで、本当に強い男を見た事が無い。そして、本当に弱い女も見た事が無い。強いフリをしている男や、弱いフリをしている女なら、くさるほど見てきたけどね。」

・「『今』生きる、『ここ』が美しくなきゃだめだ。」

・私がご自宅にお邪魔したおり、先生のお年の割にはずいぶん幼いお子さんが一人いらっしゃったので、「お子さんはお一人で?」と聞くと、
「上に娘が一人・・・いたけど男と出て行きましてね」と神妙な顔で答えられ、
(ヤベー!なんかワケアリ地雷踏んでしまったのか!)とビビっていると、

「・・・世間ではそれを結婚というらしいがね」と続け、お茶吹きそうになった。


そろそろ眠いのでまた明日。